取調べ拒否にデメリットはあるか?
取調べに応じることによるメリットがある場合というのは、被疑者供述を残しておくことが有利な場合に限られ、かつそれが勾留理由開示公判における被疑者意見陳述による供述の証拠化(証拠開示未了の段階での被疑者供述が勾留理由開示調書として証拠化されてしまうことにデメリットもある)の方法よりも有意・適切な場合に限られると言うべきであろう。ただ、そのような場合は相当限られているというのが私の認識である。
他方で、取調べ拒否をすることで、その後の身体拘束への影響がないかは、弁護人であれば当然に考えておく必要がある。しかし、取調べ拒否が身体拘束に与える影響は大きくないと考えられる。残念なことに本邦は軽微な事案でも被害者が観念され、被害者との接触可能性があれば、2号事由が肯定され、前科がなくとも3号事由が認定されるのが実情である。依頼者が被疑事実を認めている場合には、その旨を弁解して供述調書を作成することが早期の身体拘束からの解放に繋がることはあるものの、否認事件においては、取調べに応じようが応じまいが、検察官は被疑者に対する勾留請求をするし、裁判所も検察官の請求に応じて勾留を許可している。その意味において、取調べ拒否それ自体によって勾留がとられるわけではないし、本件のように、取調べ拒否をしていることにより勾留延長期間が長くなるわけでもない。
ただ、京都地方裁判所では、判で押したように「取調べ未了」を理由とする勾留延長が認められているのが実情である(実際に「被疑者取調べ未了」というゴム印が作成されて令状裁判官室に備え付けられている)。しかし、被疑者が取調べを拒否したことは一件記録に記載されており、包括的黙秘権行使の結果としてもはや取調べは無用であるから、「被疑者取調べ未了」を理由として、さらに勾留延長を認めることはできないはずである。それでも京都の令状裁判官は身体拘束が重大な権利侵害行為であるという意識を欠いている[1]ので、弁護人において勾留延長決定に対して必ず準抗告をしておく必要はある。
保釈についても取調べ拒否により保釈が認められないわけでなく、あくまでも証拠構造の問題と考えられる。結局、単独犯の場合で取調べを拒否しているにかかわらず起訴されている事案は、客観的証拠の証明力が相応に強い事案であるから、起訴後の勾留理由開示公判における被告人意見陳述という段階を踏めば十分に保釈も認められる。
さいごに
京都では取調べ拒否は単なる選択肢の一つとなりつつある状況である。今後は、被疑者弁護において取調べ拒否を含めていかなる選択をするのが最善であるのかを個別具体的事案に即して検討していくことになると思われる。
(『季刊刑事弁護』127号〔2026年〕を転載)
注/用語解説 [ + ]
(2026年07月19日公開)
