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『オアシス・インタビュー』第6回 阿部恭子さんに聞く

加害者家族の悩みを整理し支援する

遅れている支援の法制化


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阿部恭子さんインタビュー 8月24日、現代人文社会議室

1 新型コロナウイルス感染拡大の影響

—— 現在、新型コロナウイルス感染拡大が続いておりますが、ワールド・オープン・ハート(Word Open Heart)の活動の中で、その影響はありましたか。

阿部 コロナ禍でも、講演などはキャンセルになりしましたが、仕事の量自体は減りませんでした。活動の中で一番打撃が大きかったのは、加害者家族の会の開催がむずかしくなったことです。加害者家族は孤立しやすいので当事者が集まって話をする会を仙台、東京、名古屋、大阪、熊本など全国各地でやっていました。
 定期的に開催できているのは仙台ぐらいです。東京は7月ぐらいから復帰しています。大阪では、家族会を運営していますNPO法人スキマサポートセンター(http://sukima-support.red/about/)が一時中止していましたが、7月から再開しております。熊本では参加者に高齢の人もいるので、ソーシャルディスタンスなど感染防止策を取ったうえで開催していますが、それでも参加者が少なくなってしまって、開催が難しいのが現状です。
 初めての人にとっては、オンラインはちょっとハードルが高いので、やっぱり顔を見ながらということが家族会のとても大事なところなので、それが物理的に難しいことが一番の影響です。

—— 相談の内容では具体的にどんな影響がありましたか。

阿部 相談はDVが多いと思います。DVの中で、刑務所から旦那さんが出てくる、お子さんが出てくるといった人たちです。ちょうど3月、新型コロナ感染が拡大した頃に出てきた人たちが、飲食店に勤務する予定だったのですが、その飲食店がつぶれてしまった、店を締めるということで、そこで仕事があると思っていたのになくなって、家に帰ってくることがありました。奥さんとすればもう1人養わなければならない人が家に増えてしまうので、その点でのもめ事などが多くなっています。もともと出所者の社会復帰は難しいと思いますが、新型コロナ禍でより難しくなっていると思います。

2 少年事件での加害者家族の実態は

—— これまでに現代人文社から加害者家族支援の本を4冊出しておりますが、本年6月に、5冊目になる『少年事件加害者家族支援の理論と実践――家族の回復と少年の更生に向けて』(http://www.genjin.jp/book/b516026.html)を出版しています。少年事件での加害者家族の実態を簡単に紹介してください。

阿部 少年事件では、少年の保護者の立場にいる人、つまり親に対する社会的なバッシングが非常に強いのが特徴です。子どもが犯罪を犯した要因が親にあることが否定できないケースは実際多いことは確かです。しかし、なぜその少年が罪を犯したかがまだ分かっていない段階で、「死ね」、「子どもが顔を出せないなら親が顔を出せ」、「親が責任を取れ、本人が死刑にならないなら親が死ね」と、その批判が成人事件の場合より強く親に向かってきます。鴻池祥肇さんという元大臣の「市中引き回し」という発言は、その象徴的なものです。

 少年の親たちの自責の念はかなり強いと思います。それと現実的に、損害賠償責任という法的責任を負う家族もいます。人が亡くなった場合、何の保険もないので、5千万円とか1億円近くの賠償額を負うことになり破産する人も非常に多いです。子どもを更生させる責任と犯してしまった罪を一緒に償う責任の両方が親にのしかかってきます。

3 相談を受ける流れ

—— そういう相談は、どういう形でワールド・オープン・ハートに来るのでしょうか。

阿部 多くは電話です。ホットラインに直接かかってきます。これが最近ですと、割と逮捕の段階でかかってくることが多いんです。

—— それは、団体の存在が世の中に知られるようになったということですか。

阿部 インターネットで団体を知ることができるようになったことが影響しているのではないかと思います。

—— それで電話が来てから、相談はどういうふうに始まりますか。

阿部 まず電話がかかってきたときに、最初に、その事件自体がどういう状況にあるかを聞きます。そうすると、「今、夫が刑務所にいて、これから出てくるんですけど」、「今、逮捕されて外にマスコミがいるんですけど」、「弁護士をどう探せばいいか迷っているんですけど」と言われれば、事件が刑事手続のどの段階にあるかがすぐ分かります。
 それに沿って助言をしていくという形です。例えば、弁護士の紹介、報酬の目安を答えて終わるケースもありますが、大きな殺人事件ですと、今は接見できないからいろいろなことが分からないけど、また接見できるようになって、事件の詳細な情報が分かった段階で連絡してもらう。そうすることによって、次の助言ができます。相談はかなり継続的になります。

 今、相談は年300件ぐらいで、そのうち50件ぐらいが継続になります。情報を提供して、「こうだと思います」とか、親としてどう謝りに行けばいいか、私の経験談を話して、「こんなんじゃないですか、こういう経験を私はしました」と言って、1回で終わるほうが多いかもしれません。
 受刑者の家族になると、そんなに状況が変わらないので間隔が空いたサポートになります。1年たち5年たち、そろそろ刑事施設から出くるころに、相談が来ることがあります。このようにケース・バイ・ケースです。

—— そうした相談は全国からきますか。

阿部 全国的ですね。

—— 年300件ですと、1日1件ぐらいになりますが、それはかなりの負担になりませんか。

阿部 発足して1年目ぐらいは50件あるかないかでした。初めは返答の要領が分からなかったので、昔のほうが忙しかったという感じはあります。今はある程度経験を積んできたので、こういう相談にはこう答えればいいということが自分の中で大体できているので、答えられてすぐ終わります。今のほうが、そんなに多く受けている感覚はありません。

—— 具体的なことは特定されるのであまり話せないと思いますが、最近受けた相談で何か印象に残っているものはありますか。

阿部 子どもが犯した殺人事件があります。少年が高校生のときに、いわゆる通り魔殺人事件で、人を刃物で刺して殺しました。裁判で不定期刑になって、今、少年刑務所にいます。家族はいまも、遺族に対してもきちんとした謝罪もできていない状態です。そのことを家族もすごく気に掛けています。裁判は裁判員裁判でしたが事務的に進んでいったので、なぜその人が殺されるに至ったか、動機が分からないまま終わってしまいました。

 私も少年とは面会しています。コミュニケーションは取れますが、「こうだからこうだった」という説明はなされません。無理やりこじ開けて聞いても仕方がないので、何年間かかけて聞いていかなければいけないと思いますが、その辺で家族、親としては苦しんでいます。事件の影響できょうだいが学校を卒業できなくなったり、転居をしなければいけないということで、転校も余儀なくされました。
 そうした子どもたちの環境で、親御さんとしてはいろいろな面で困難を抱えています。これは家族だけでは多分、背負えないと思います。われわれとしては、時間をかけて一つずつ手伝うということで支援を続けています。

(2020年10月27日公開) 

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