【「証拠物の証拠価値の保全・鑑定に関する規律を設けるか」について】(20分)
この論点に関しては、まず筆者が立法事実を示すという形で口火を切った。発言の要旨は以下のとおりである。
鴨志田:まず、証拠物の証拠価値の保全・鑑定に関する規律を設ける必要性を示す立法事実を示したい。
DNA鑑定等の対象となる生体試料については、それが全量消費されたり、ずさんな保存状況により劣化したりするリスクが高く、鑑定試料が失われてしまった場合には、鑑定さえできていれば確実に明らかとなったはずの事実が永遠に解明不能となるという取り返しの付かない事態をもたらす。
机上配布資料の論文(「再審事件にみる証拠の保管・開示の問題」季刊刑事弁護123号〔2025年〕36~43頁)に詳細を記載しているが、DNA鑑定が再審開始、再審無罪を導いた事例のうち、足利事件では、再審請求段階でDNA鑑定試料となる被害女児の半袖下着の保存状態が悪く、このままではDNAの再鑑定ができなくなるということを危惧した弁護団が、半袖下着をマイナス80度に冷凍して保管するようにという趣旨の証拠保全を求め、これを受けた裁判所が半袖下着を押収し、これを自治医科大学の法医学教室に保管させるとの決定を行った(刑訴法99条3項《当時は2項》)。
また……
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(2025年09月19日公開)