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第5回山本衛弁護士に聞く

専門的な知識を弱い人のために使いたい

刑事弁護からスポーツ法務まで

(後藤貞人法律事務所にて、2021年7月6日編集部撮影)

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1 新型コロナウィルス感染の影響は

――新型コロナウィルス感染拡大がなかなか収束しないのですが、仕事のうえで、この影響はありますか。

山本 今(2020)年4月1日に独立してすぐに緊急事態宣言になって、裁判所がストップして訴訟が進行しなくなりました。コロナの影響はあったと思います。

――裁判所は4月1日から休廷になってしまったんですか。

山本 ほぼ全ての裁判が止まっていました。

――ご自身が担当した裁判もかなりあったんですか。

山本 ありました。

――再開されたのは、緊急事態宣言が終わってからですか。

山本 そうです。6月頭くらいから少しずつ公判が入り始めました。

――法律相談では依頼人と対面せざるを得ないと思いますが、その点では、現在はどのように気を付けていますか。

山本 依頼人との打合わせは、初回は来てもらうことを原則としています。フェイストゥフェイスのコミュニケーションはやはり大事です。もともと面識があったり、信頼関係があったりする人、特に顧問先との関係は、オンラインで実施することもあります。弁護人同士の打合わせは、今はオンラインも多いですね。

――特に支障はありませんか。

山本 そんなに支障は感じてないですね。

――特に、こういう点で問題があるということはありませんか。

山本 裁判所が裁判員に気を遣っているのか、感染対策を過剰にしているところが気になりました。

――弁論をマスクなしでやりたいという弁護人のことが報道されていましたが、山本さんもないほうがいいですか。

山本 正直、ないほうがいいですね。人に大切な話を聞いてもらうとき、マスクをしたまま話すというのは効果的ではないと思います。マスクで顔を隠したままではなくきちんと被告人の顔を見て判断してほしいですし、私自身も、何かを裁判官や裁判員に伝えるときには、マスクで顔を隠したままではなく、伝えるべきことを伝えたいと思っています。

――それに対する裁判所の対応は、マスクをしろの一点張りですか。

山本 基本的には一点張りですね。ただ、命令までされる例は少なく、お願いベースでプレッシャーをかけてきます。

――裁判所が考えているのは、マスクだけの対策ですか。

山本 そうですね。何かマスクをすれば万事OKという感じの雰囲気を受けますが、それがなぜなのか、僕には分かりません。

――拘置所や警察署の対応はどうですか。

山本 今の時点では、特に弁護人としては問題を感じたことはありません。ただし、事実上、一般面会ができなくなったことがありました。これについては問題意識を持った弁護士が迅速に法的手続をとるなどして、今は改善されています。

2 事務所を独立して感じたこと

――最近、新しく事務所をつくって独立しましたが、独立してよかったという感じですか。

山本 独立してよかったと思います。そこには何の後悔もないです。前に所属していた東京ディフェンダー法律事務所が嫌だから独立したわけではありません。そこにいても自由にどんな事件でもできました。刑事しかやってはいけないという縛りは一切なくて、すごく居心地がいいし、仲間も素晴らしい人ばかりでした。刑事弁護を一線でやっていくのであればこれ以上ない環境でした。あとで詳しく言いますが、独立したのは、自分の弁護士としての人生プランの問題です。刑事弁護専門法律事務所にいたら、その事務所のホームページをみても、外からは「刑事弁護ばかりやっている事務所の下のほう」という感じでしか見られないので、普通に考えれば、会社の顧問を頼もうとする人はいないですね。刑事弁護専門法律事務所という所からフラットになりたかったという思いはすごく強かったです。だから、今の事務所も、横文字で何か理念を表しているとかではなくて、あえて無色の名前を付けています。

――独立するといろいろ大変でしょう。自分で全部やらなくてはいけないわけですから。

山本 全然大変じゃないですよ。正直、その面は思っていた大変さの10分の1くらいです。事務員を積極的に使う、大規模な破産の申立とか、債務整理の分野ではちょっと苦しいのかもしれませんが、幸いにも、そういう分野の事件は現状多くありませんので、今のところ大丈夫です。

――事務員を雇っていないんですか。

山本 荷物の受取りなど受付業務はこのオフィスのフロントの人がすべてやってくれます。電話とかファクスも自分がいる所に全部転送されるようになっています。

――それは理想的ですね。新しい事務所モデルになるかもしれないですね。

山本 そうなんです。いわゆるレンタルオフィスを使っている弁護士はあまりいないですからね。でも弁護士はそういうことができる事業だと思います。
 部屋はたいへん狭いけれど、そのスペースで全然足ります。普通の弁護士事務所は、受付、執務スペース、打合室、会議室があるのが普通です。執務スペースは、弁護士が外に出ているときは、その日の賃料は無駄です。会議室だって使ってないときは賃料が無駄になります。
 そう考えて、スペースをミニマムにしていけば、すごく小さい執務スペースで足りる。起案とかは家でもできます。もちろん、今は事業が小さいので、大きくなってきたらここを出て普通の事務所を借りるかもしれないですけどね。

――レンタルオフィスだから身一つで来ればいい。

山本 そう、移転費用はほぼゼロです。普通だったら、保証金半年分とか、内装費が何百万円とかが必要で、弁護士会から独立費用を借りたりもするのですが、それが一切ないです。

――それはすごいですね。究極のテレワークになりますね。

山本 ここに来ている日はそんなに多くないです。家で仕事をやっています。

(2020年11月28日公開) 

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