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第5回山本衛弁護士に聞く

専門的な知識を弱い人のために使いたい

刑事弁護からスポーツ法務まで


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8 スポーツ法務とは

――話が変わりますが、季刊刑事弁護103号のインタビューで、今後、スポーツ法務に力を入れているということをお話ししていましたが、スポーツ法務とはどんなものでしょうか。

山本 スポーツ法務の定義はなかなか難しいですね。その定義の仕方は、人それぞれの仕事にかかっているような気がしています。一口に言ってスポーツにまつわる法的問題、というと広いでしょうかね。たとえば、スポーツ仲裁と言って、例えばあるスポーツ団体に処分を受けたけれど納得できないので仲裁の申立てをする、その中で自分の権利を回復していく。そういう手続に関与していくことなどは典型例です。
 あとは、スポーツ団体のガバナンスの問題があります。スポーツ団体によってはその運営の根拠となる規程が不備なものもあります。弁護士が入ってきちんと法整備をする。そういうのが典型例です。あとはドーピング違反を疑われた人の弁護をする。そのほかスポーツビジネスにかかわる様々な処理の面で弁護士が支援することも含まれると思います。
 現在、テニススクールの顧問弁護士や全日本男子プロテニス選手会の顧問をやっているのですが、それが今の中心的な仕事です。ただ、スクールの顧問は普通に中小企業法務ですから、スポーツ法務というほどのものでもないかもしれません。
 結局、私の中では、「スポーツ法務」は、スポーツにまつわる法分野、法務分野を広く指すと思って取り組んでいます。

――それに興味を持ったのは、ご自分でもスポーツをやっているからですか。

山本 僕は中学からずっとテニスをやってきています。弁護士になってから、スクールの顧問は前々からずっとやっているのですが、縁あってそこから輪が広がりました。専門性でサポートできて、テニスという競技がもっとよくなればすごくいいなと思うし、実際そういうことができているので、自分としての自己実現のかたちとして、今はそこに力を入れています。

――刑事弁護とスポーツ法務の2つが、今一番主にやっていることですか。

山本 事件の数としては、その2つを両立させるほど、スポーツ法務はまだやっていません。現在、民事事件と刑事事件は半々くらいで、若干刑事事件のほうが少ないくらいで、スポーツに関係のある案件は、民事事件の中では3〜4割くらいという気がします。  

――スポーツ選手個人の顧問になることもありますか。

山本 それもあり得ると思います。ですが、個人の顧問というのは、これから開拓できる分野だと思います。僕自身も一件、それに近いことをやっています。

9 刑事弁護で力を入れたいこと

――最後にお聞きします。今後、特に刑事弁護の中で力を入れたいというのは何かありますか。

山本 事実を争う事件、無罪を主張する事件、あとは上訴事件にできる限り特化していきたいと思っています。

――いわゆる量刑弁護はあまり好きではないですか。

山本 正直、量刑弁護からは関心が薄れつつあります。もちろん量刑弁護でも争うところがあるし、十分やりがいがあることはわかっていますが、自分の性分に合わない気がします。現在、量刑弁護は1件くらいで、あとは否認です。自分のやりたい方向にシフトするようになってきています。事実を争う事件だけやっていれば十分仕事になるというワーキングスタイルを目指しています。

――具体的に、何件ぐらいやれば事務所経営がうまくいくことになりますか。

山本 それは民事事件との関係もあるから、一概にいうのは難しいでしょう。今までより刑事事件の比率を落として、刑事事件もやりたい事件に特化してやるという形にしたいと思っています。

――そういう仕事配分をしていくということですね。

山本 そうしていきたいですね。今は順調にそういう方向に行っています。

――事実を争う事件、上訴事件をやりたいというのはどんな理由ですか。

山本 認める事件に対して知的好奇心があまり高まらないと感じてしまっている自分がいるんです。例えば尋問もあまり白熱したものにならないし、自分にとって得るものが少ない。今後、多分変化があるんでしょうが、今は、認めの事件はあまりやらないという方向でやっています。

――それは、弁護士になって10年目に近付いてきたから、ひとつ自分の生き方をもう1回見つめ直そうという意味ですか。

山本 東京ディフェンダー法律事務所にいた最後の2年くらいはそういうことを考えました。このままずっと刑事だけをやって生活していくのは簡単ですが、その2年間くらいの間でほかの業務分野、とくにスポーツ法務の魅力を知った。スポーツ法務は、古典的な刑事弁護の仕事ではなくて、業務開拓、業務を発展させる一つの新しい試みなので、新しいことをやるということでは、挑戦的な分野です。テニスの関係だと、いろんなテニスの関係者と知り合っていろいろ話をして、いろいろな相談を受けたり、新たに法律家が切り込める問題を知った。そういうことの面白さにも目覚めてしまった。
 そうした挑戦的な弁護士のビジネスモデルを考えることにすごく興味を持ってしまった。そう考えると、「刑事弁護だけをやっているのはもったいないんじゃない?」というか、自分の力をもっとほかに使えるということに目覚めたわけです。
 そこは別の分野もやりつつ、刑事は自分のやりたい分野に特化していくほうが自分のためだなと思って、そういう方向に転換しているところです。

――どうもありがとうございました。

(2020年11月28日公開) 

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