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「人質司法」を意識しない裁判官、できない裁判官(下)

森脇淳一(もりわき・じゅんいち)

「人質司法」を意識しない裁判官、できない裁判官(下)

被告人が逃亡して裁判できなくなると、「裁判官の責任」か

──先ほどから逃亡のおそれが問題になっていますが、逃亡なんてそう簡単にできないし、事件も年に1件あるか2件あるか程度のことです。それは、裁判官にとって、そうされたら怖いというか、成績に関係することですか。

 保釈を認めたあとで、保釈事故が起こったら、裁判官は責任を問われるといわれますが、責任は裁判官にない気がします。

森脇 逃亡した事件で有名なものにイトマン事件(1991年)の許永中の逃亡があります。ああいうことが起こるからね。

──最近有名なものではカルロス・ゴーンさんの事件がありますが、そういうことはごくまれではないですか。

森脇 ごくまれだけど。

──裁判官が手を貸して逃がしているわけではないですから、裁判官に責任はないと思います。

森脇 逃亡されると裁判はできなくなります。それは、刑事司法の根幹を揺るがす事件です。裁判官としては、保釈しなければよかったということです。

──根幹を揺るがす……。

森脇 裁判できなくなったわけだから、それは「根幹を揺るがす」です。

──そういうふうに考えると、大川原化工機事件のように、保釈が認められないがために病気が悪化して亡くなったということも起きてしまいますね。刑事司法の根幹……

(2025年04月17日公開)


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