ハビエル・ロペス(仮名)さんはドミニカ共和国出身の23歳の青年である。永住者の資格で日本に暮らしている。彼はまず麻薬特例法上の「あらかじめ覚醒剤として交付を受けた物品」の所持で逮捕・勾留され、その後同じ事件について覚醒剤3,915グラムを密輸したとして逮捕・勾留された。私は密輸事件での勾留決定後に二人目の国選弁護人となるよう打診された。一人目の弁護人は長年裁判官を務めた後で弁護士登録した人だった。裁判所による追加選任の決定を待って、警視庁本部留置施設東京湾岸分室にいるロペスさんに会いに行った。
事案の概要ロペスさんは私に次のように話した。
「以前熊本県内の半導体工場で働いていたことがあり、そのころミゲル・フェルナンデスと知り合った。フェルナンデスはコロンビアに帰国した。最近になって彼から連絡が来た。日本に住むいとこに荷物を送りたいが、いとこが日本語に習熟していないので代わりに受け取ってほしいと言われた。彼によると、『荷物とはクレーンのような機械で40万円くらいする、受け取りのためにUPSの集積場へ出向く必要がある、そこで段ボールに梱包された機械を受け取って車に積み、指定された場所へ運んでほしい』とのことだった。必要な経費として高速道路代8,000円のほかにガソリン代などとして3万円を支払うとも言われた。アルバイトになると考えて引き受けた。友人から車を借り、UPSの集積場へ行って荷物を受け取った。フェルナンデスに指定された場所まで荷物を運んだ。」
彼の受け取った荷物にはもともと覚醒剤が隠されていた。捜査官はそれ……
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(2025年05月15日公開)