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漫画家・浅見理都が刑事弁護人に聞くザイヤのオオカミ

第3回 久保有希子弁護士に聞く(1)

常に謙虚であり続ける

どんな話でも決めつけず、受け止める


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なぜ悪い人を弁護するのか

 インタビューするすべての弁護士にお聞きしているのですが、一般の人から、なんで悪い人を弁護するのかという質問をされたら、どのようにお答えしますか。

 いくつかの観点があると思います。一つ目は、そもそも悪いことをしたかどうかというところから問題になるケースです。それは単純にやったかどうかが争いになる事件ですが、そういう事件では弁護人からの援助が必要だということは理解されやすいと思います。

 二つ目は、やったことは事実で、悪いことをしたのは間違いないというケースです。こういうケースでも、悪い面については検察官が立証しますし、弁護人は弁護人として、被告人にとってプラスになる面に焦点を当てます。両方とも一つの材料として裁判に出し、その上で裁判官に判断してもらうのが公平だと考えています。

 実際、悪いことと言われるようなことをやり、それが本当にひどい内容であることは当然あります。しかし、すごい凶悪犯罪のように報道されている事件でも、実際に被疑者となっている依頼者に面会して、本人から話を聞くと、全然見え方が違うこともたくさんあります。直接、本人から話を聞いて、裁判の中で反映されるべき点を、適切に反映できるように活動すること。それを担っているのが弁護人であり、重要な役割だと考えています。

 一般の人からすると、「冤罪(えんざい)ではないのなら、死刑になって当然だ」みたいな風潮があると思います。これについては、どう考えたらいいですか。

 一般の人がそう思うのは当然だと思います。検察官からは当然悪い部分が出てきますが、事件の側面はそれだけではありません。いい面も悪い面もひっくるめて適切な刑にするべきで、悪い事件だとしても悪い面だけを考慮すると、適切な刑にはならないと思います。

 例えば、同じ「人を傷つける」という事件の中にも、精神的な病気の影響で人を傷つけてしまった場合や家族から虐待を受けて家族を傷つけてしまった場合、介護疲れで追い詰められて傷つけてしまった場合などがあります。その一方で、単なる逆恨みで傷つけてしまう場合などもあり、それぞれ個別の事情が刑に反映されないと不公平です。

 もちろん、裁判官が判断した刑がそのまま適切とは限りませんが、少なくともいろいろな材料をきちんと土俵に乗せる作業を、検察官だけに任せていると、その事件の実態に合った適切な刑にはならないと考えられます。

 一方的すぎますからね。いろいろな材料をきちんと土俵にのせなくては、適切な判断を下せないんだという説明は、一般の人もイメージしやすいと感じました。

 やはり役割分担だと思います。検察官は検察官の立場で必要な材料を裁判所に提供する。悪い部分が中心になるのは当然ですが、弁護人も悪い部分を隠すのではなく、それはそれとして認めないといけないところもあると思います。

 その上でさらに考慮してほしい事情があれば、それを材料として提供します。悪いことをしたのが前提だとしても、検察官が主張する動機と依頼者の本当の動機が違うことはよくあります。検察官の言っていることに間違いがあるのであれば、当然、それは指摘する必要があります。

 検察官が言うことが常にすべて正しいとは限らないですし、検察官がわかっていても、立場上、出さない材料もあります。そういうところを本人から聞いたり、いろいろな証拠を見て、弁護人として、裁判の中で反映させないといけないですね。

弁護士を目指したきっかけ

 久保先生が弁護士を目指そうと思ったきっかけは何ですか。

 きっかけはテレビの影響で、小学生の頃から2時間サスペンス──「火曜サスペンス劇場(火サス)」が好きでした。だから「火サス」が終わったときは本当にショックでした。

 「火サス」が絶対なんですね。

 そうなんです。展開はわかっているし、途中で犯人もわかりますが、安定感のある結末も含めて非常に好きでした。

 崖の上に詰め寄るあたりまで。

 そうですね、崖までワンセットで。現実には絶対にありませんが、そこもフィクションとして面白かったです。最近だと「99.9(—刑事専門弁護士—)」や「リーガル・ハイ」は見ましたよ。

 あぁ、やってましたね。私も見てました。

 話題になっている刑事物はチェックし、録画して、見たりしています。あとは、家族がサスペンスものの小説や漫画が好きで、私も影響を受けました。私はもっぱら漫画ですけど、サスペンスものをよく読んでいて、それが原点です。

 そうなんですね。フィクションの分野から惹かれていった。

 そうですね、最初は。警察って格好いいなとか、検察は検察で格好いいなとか。いわゆる法廷ものが好きでした。

 最初からそっちが好きだったんですね。そこから実際に弁護士になるところが、私からしたらすごいなって思います。そう考えると、フィクションの影響力って大きいんですね。

(2021年06月21日公開) 

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インタビュイープロフィール
久保有希子

(くぼ・ゆきこ)


2007年弁護士登録。日弁連刑事弁護センター事務局次長。共著書として、日弁連裁判員本部編『裁判員裁判の量刑』(現代人文社、2012年)、『刑事弁護ビギナーズver.2.1』(現代人文社、2014年)、日弁連刑事弁護センター編『裁判員裁判の量刑Ⅱ』(現代人文社、2017年)、科学的証拠に関する刑事弁護研究会編『刑事弁護人のための科学的証拠入門』(現代人文社、2018年)など。

インタビュアープロフィール
浅見理都

(あさみ・りと)


漫画家。1990年、埼玉県生まれ。『第三日曜日』で第33回MANGA OPEN東村アキコ賞を受賞。『イチケイのカラス』は自身初の連載(モーニングで連載、2018年24号〜2019年14号)。


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