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漫画家・浅見理都が刑事弁護人に聞くザイヤのオオカミ

第4回 髙橋宗吾弁護士に聞く(4)

先輩から受け継ぎ、若手が変えていく刑事弁護

地域や世代の差を無くし、いろいろな人を巻き込む


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刑事弁護人としての自立に向けて

 今後の目標として、個人的には何かありますか。

 刑事弁護のという意味では、尋問とか弁論とかの法廷技術をとにかく磨いていきたいという思いがずっとあり、それは今後も続いていくと思います。

 もう一つは、弁護士としての大きな転換点として、今の事務所の支部の形で京都に出てきたことが挙げられます。京都オフィスの代表として、事務所の経営もしていくことになったのですが、それと同時に、関西で刑事事件をやっていくことにも大きな意義があると思っています。ケージェネの関西支部、という夢も膨らみますし。

 また、関西には尊敬できる刑事弁護士の先輩が本当にたくさんいますが、その中で、新参者の自分がどれだけ信頼される刑事弁護士として地位を確立していけるのか、試してみたいと思っています。

 京都は、刑事弁護も活発な地域です。突出してリードしている先生方もいますが、弁護士全体の意識がとても高いと感じています。その中で、私も裁判所や検察庁に存在感を示せるような活動をしていきたいと思っています。

 目標が明確で、見習わなくてはと思いました。『イチケイ(のカラス)』の監修をしてくれた、元裁判官の片田(真志)先生が京都にいらっしゃるので、ぜひ会ってください!

ドラマや映画といったメディアの果たす役割

 『イチケイのカラス』は本当に面白かったです。

 ありがとうございます。

 弁護士任官、というのがこういう形で描かれたことに、とても可能性を感じました。入間(みちお)裁判官のような人が一人出てくれば、実務に大きな影響があると思います。

 入間さんのような、刑事弁護士としてあれだけの経験を持っていながら、勢いのある若い時期に裁判官になる人はそうそういないと思っているので、こういう設定は夢があると思いました。

 それはよかったです。実際、弁護士任官で刑事(弁護)をやらせてもらえないとは聞いていましたが、「いいや、やっちゃえ!」っていう感じで。

 たしかに、最初は結構思いきった設定だなとも思いました。大ベテランの刑事弁護士が裁判官になることすら実現していませんし。

 これまでにインタビューで登場している坂根先生とか久保先生が、裁判官をやることがあったらすごいなとは思いますが、そうなったら、裁判所としてはかなり対応に苦慮しそうですけど……。

 強烈なインパクトがありそうだと思います。かなり空気感が違うので、どちらも大変そうですね。

 もしそうなったら、実は私たちにとって、一番の強敵になるのではないかという気もします。私たちがやろうとしていることを全部見抜かれているわけだから、そこはアラがあればすぐ突かれます。

 確かに。

 そういう刑事弁護士が裁判長をやっている法廷で、僕らが安心できることは絶対にないし、むしろ怖くて弁論もできなくなりそうです。

 身内が一番厳しいのかもしれないですね。『イチケイのカラス』では、調べに調べた結果、ようやく「弁護士任官ってあるんだ」って気づき、大きな発見でした。

 法廷物とか弁護士物は、キャラクターがやたらと立っていたり、あるいは設定が奇抜なものが多いので、普段そんなにまじめには見ません。漫画やドラマでも面白いと思う作品はありますが、その中でもあの設定はぐっときました。

 それは描いてよかったです。描き終わってから、プロの人がこんなに読んでいたんだと知りました。うれしいです。

 社会への発信という意味で言うと、我々の活動を本やドラマにしてもらうことは大事だと思います。一般の人が目にするのはやっぱりそういう媒体を通してだから、そこでどう描かれるかが大事です。

 私は最近エンタメ系の仕事をやることも多くて、映画の法律監修をしていたり、小説家の友達がいたりします。『元彼の遺言状』(宝島社、2021年)で「このミス大賞」(「このミステリーがすごい!」大賞)を取った新川帆立さんは妻と仲が良くて、彼女とも「この業界を描いた作品を映像化しよう」などと野望を語り合ったりしています。

 私が小説を書くのは難しいので、そういう才能のある人たちに、我々の業界のことをもっと掘り下げて書いてほしいなという思いが強くあります。

 新川帆立さんのインタビュー記事、読みましたよ。

 ロースクールの頃から知っているのですが、彼女はとても賢いだけでなく、生き様が非常に面白いです。

 今は、リアルでありつつも、いわゆるエンタテインメントとしての小説を書いているようなので、「もう少しリアルな設定で書いてよ」と言って、勝手にアイデアを出し、それを小説で書いてもらおうと目論んでいます。

 ワンポイントアドバイスのような?

 そんな感じです。「こういう設定で何か書いてよ」って。

 それは、すごいです。私もいつかお会いしてみたいですね。

(2021年09月13日公開) 

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インタビュイープロフィール
髙橋宗吾

(たかはし・そうご)


1989年、埼玉県生まれ。早稲田リーガルコモンズ法律事務所京都オフィス代表。K-Ben Next Gen運営メンバー。日弁連刑事弁護センター事務局次長。京都弁護士会刑事委員会委員。共著書として、『量刑弁護アドバンス』(現代人文社、2019年)など。刑事事件の他、中小企業の顧問業務・寺院法務・エンタメ法務にも取り組む。

インタビュアープロフィール
浅見理都

(あさみ・りと)


漫画家。1990年、埼玉県生まれ。『第三日曜日』で第33回MANGA OPEN東村アキコ賞を受賞。『イチケイのカラス』は自身初の連載(モーニングで連載、2018年24号〜2019年14号)。


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