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『オアシス・インタビュー』第4回

【後編】地域との共生を目指す官民協働運営の刑務所

美祢社会復帰促進センターの取組み


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旧奈良刑務所の房入り口
旧奈良刑務所の房入り口(2019年11月24日)

6 地域社会との共生を目指して

—— 美祢で力をすごく入れていることは、地域社会との共生だと言われていますが、具体的にはどんなことをされるのでしょうか。

手塚 受刑者は刑期が終了すると、いや応なしに社会に戻っていくわけですから、社会とのつながりを絶つことはできないということです。それには、地域の皆さんの理解と協力がなければ、それを保つことはなかなかできないことになります。

 PFI刑務所を行う際に目標を立て、地域との関係で、新たな産業の創出、地域経済の活性化、地域交流の促進、地域住民の理解を重視しました。具体的にはどうかというと、民間委託していますので、民間職員を地元から採用することによって、雇用の確保が拡大します。

 センターで使用する食材や日用品については、地元購入を行います。宿舎には、職員、家族が生活していますし、面会や参観の人も多く来ますので、そうすると、市内購買力が増加することになります。これは地域活性化の大きな要素です。

 それから、新しい産業創出という面でも、刑務作業を利用した産業を生み出そうということで、美祢であれば、竹箸を作っています。

—— 地元の雇用拡大や購買力の拡大のほかには、どんな効果がありましたか。

手塚 私としては、地域の人たちの人材活用が一番ありがたかったです。私は、「社会復帰支援コミュニティー活動」と勝手に呼んでいます。それは何かというと、職業訓練の講師に地元の人を採用したり、先ほど言った手話基礎科とか、ボランティア啓発とか、点字専攻、こういうものに地元の人たちが非常に多く携わっています。これが、刑務所へ外から空気を入れるという面では非常に大きかったです。

 さらに今行っているのは、「地域お手伝い活動」と言って、受刑者が外に出ていって、公共の施設の清掃を行っています。また、「文通プログラム」と言いますが、地元住民と文通を行っています。

 それから、もう一つ、今度やり始めたのはコミュニティサークルです。これは何かというと、受刑者と地元住民があるテーマによって議論し、相互親睦を図るという活動を行っています。それによって、受刑者が社会とのつながりを持っていると感じてもらえるかなと思っています。それには、地元の人の理解と協力がないと実現しません。美祢と島根あさひでは地元の人で、理解してくれる人がたまたま多かったものですから、そういうことができるようになりました。

—— 所長になった時点で、そういう地元の人たちとの理解を肌で感じたわけですか。

手塚 実を言うと、PFI事業は、私が矯正局にいたときに企画・立案したもので、そのときから、地元には何回も訪問しています。美祢も島根あさひも、2年間ぐらい、そこに行って、地元の人の意見を聞いたり、町民会議に出たり、そういうことで意見を聞きながら、プログラムやシステムを作りました。ですから、センター長で行ったときは、地元の人は既に知っている人ばかりだったので、非常に仕事がやりやすかったです。

—— 地元の人たちに、刑事施設を造ることを理解していただいたうえで、施設を造ることになったということですか。

手塚 地元には、「刑務所は恐ろしい所だ」、「犯罪者が逃げたらどうする」とか不安がいっぱいあるので、説明会を相当行いました。島根あさひだと、16~17回は行いました。そこで、地元の人たちから出てきた意見もあるので、それを吸い上げて今行っています。地元の人たちもメリットがないと、刑務所を受け入れにくいですね。

—— 例えば、どんな意見が強いですか。

手塚 やっぱり産業のことが多いです。具体的に言うと、「刑務作業でこういうことをやってもらいたい」とか、「梨園の管理も手伝ってもらいたい」とかです。それから、「魚箱の補修をやってくれ」とかも言われましたし、あとは、「休耕田があるので、米を作ってくれないか」とかです。今、それらを実際に行っています。

—— 米を作っているのですか。

手塚 ええ。米を作ったり、梨園も行っています。そういうような要望を採り入れたし、なおかつ、島根あさひは、先ほど言った文通プログラムがあります。地元には老人がいっぱいいます。最初は見守り文通プログラムで、受刑者が老人に手紙を出すことによって安否確認ができます。それでは、住所が分かってしまうと、中には、あとから訪ねて行く者もいるので、実際には住所は書かず、ただペンネームだけでやり取りを行っています。職員が手紙を預かりますので、そういう面では、職員が見守っています。それも、地元の人たちから出た発想のプログラムです。

 そういうことを通して地元の理解が得られるとともに、受刑者のほうも、地元の人が自分たちを見てくれているというのがあって、社会に出ることに非常に前向きになります。地元住民からいろいろな意見ももらうので、それを参考にしながら社会復帰に備えています。制服を着た者(刑務官)が教えることと一般社会の人が教えることは違う面があります。一般社会の人たちから言われると、素直に聞く部分が非常にあります。

—— なるほど。

手塚 先ほど言った文通プログラムをやっている人たちの再入者はほとんどいない状況です。このように刑事施設も地域社会の力を借りながらやっていかなければいけないのかなと思っています。

(2020年06月01日公開) 

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