四大死刑冤罪事件と袴田事件からみる日本の刑事司法の問題点(その2)

ダニエル・H・フット(東京大学名誉教授)
日本語訳/笹倉香奈(甲南大学教授)


2 四大死刑冤罪事件と袴田事件をめぐる考察

 “From Japan’s Death Row to Freedom(死刑確定者が自由になるまで)”で詳述したとおり、四大死刑冤罪事件は、研究者、弁護人、検察官、裁判官、メディアなど、日本社会の幅広い層から大きな注目を集めた。これらの事件について数多くの書籍や論文が出版され、幅広い制度改革の提案がなされた。さらに、無実の4人の死刑確定者が、執行の寸前まで追い込まれていたという事実は、すべての法曹関係者に深い自己省察を促した。

 日本弁護士連合会(日弁連)は、『再審』と『続・再審』の二冊の書籍を刊行し、また機関誌『自由と正義』の特集でも、死刑再審事件とその意義について取り上げた。最高検察庁は免田、財田川、松山の3事件について、検察実務への教訓をまとめた詳細な検証報告書を作成した(この報告書は内部資料であったために公表されなかったが、ある研究会がコピーを入手し、目次および主要部分を公表した((誤判問題研究会、「紹介:最高検察庁『再審無罪事件検討結果報告——免田、財田川、松山各事件』について」法律時報61巻585頁(1989年)。なお、同報告書の免田事件については、『検証・免田事件[資料集]——1948年(事件発生)から2020年(免田栄の死)まで』(現代人文社、2022年)665頁以下に、全文が収録されている。)))。裁判所では公的な報告書は作成されなかったが、複数の現役の裁判官および元裁判官が論文を執筆し、また座談会に参加した。

 膨大な学術論文の中で特に注目すべきものとして、先に触れた平野龍一による論稿「現行刑事訴訟の診断」((平野龍一「現行刑事訴訟の診断」『團藤重光博士古稀祝……

(2026年04月02日公開)


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