人質司法で、法制度をどう改正すべきか
——人質司法の問題に話を戻します。この状況を打破するには法改正が必要だということで、国会議員に働きかけているとのことでしたが、具体的にどういう法改正を考えていますか。
笹倉 重要な改正点として、国会議員にお伝えしていることがいくつかあります。プロジェクトとして主張しているのは、①取調べの時間や方法の適正化、②取調べの全件・全過程の録音・録画(参考人取調べを含む)や弁護士立会い、③保釈判断の見直し、④罪証隠滅要件の具体化あるいは廃止、⑤接見禁止の廃止——少なくとも家族とは会えるようにすること——といった、基本的なところです。
ただ個人的には、それでは足りないと思っています。まず、起訴前の身体拘束期間があまりにも長い。プロジェクトとしては起訴前保釈制度を主張していますが、私は、そもそも起訴前保釈を作るまでもなく、起訴前の身体拘束が長すぎると思っています。ですから、審理を迅速に進めるという意味でも、起訴基準を変える必要があるのではないかと思っています。
——起訴基準を変えるというのは、どういうことですか。
笹倉 今のように起訴基準が高いと、捜査関係者は起訴前のスクリーニングをかなり綿密にしなければいけません。では、そのスクリーニングをどうやるかというと、取調べで自白が取れるか取れないか、ということになります。かつて平野龍一先生などが言っておられたように、公開の法廷で事実を確認するようにする。起訴の基準を下げて、あっさり起訴することによって、「こいつは起訴されたのだから」というレッテル貼りも減らしていく。そしてオープンに手続を進めていく——それが最終的なゴールなのかなと思っています。
ただその前に、まずは取調べです。供述を拒否したら取調べをストップする。取調べが長時間できないように規律していく。そのためには身体拘束を短くしていく。それから保釈の判断のところで罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由という要件について、具体的な理由がなければ保釈を認めなければならない、という運用にしていくべきです。
先日、保釈許可の裁判に対する準抗告の決定について、特別抗告がなされた事件で最高裁決定(2026年8月31日)がありました。読み方によっては、保釈実務が変わる可能性もあると思います。
「罪証隠滅に及ぶおそれの程度が高いと見るべき実質的な理由を示」すべきということですね。その程度が本当に高いかどうかを実質的に言えなければいけない、と最高裁が言ったのだとすれば、これは裁判官に対して「抽象的な『おそれ』ではなく具体的な『おそれ』でなければいけない」というメッセージなのかなと思います。この決定は、勾留・保釈をめぐって裁判官の研修などが行われていることも、多少は影響しているのではないかと見たいところです。
——この最高裁決定を高く評価してもよいでしょうか。
笹倉 それが言えるのかどうか、まだ今後の運用を見てからでないとわかりませんね。
「自己負罪型の司法取引」への懸念
——後藤昭先生は「保釈という制度を観る視点」(季刊刑事弁護127号の特集「保釈制度に挑む」)でおっしゃっていますが、長時間の取調べや長期の勾留ができなくなり、検察官が有罪判決を確保することに不安を感じると、「罪を認めるから軽い罪にしてくれ、刑はこれぐらいにしてくれ」というような自己負罪型の司法取引の話が必ず出てくると言っています。
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(2026年10月23日公開)

