〈第1回ダイヤモンドルール賞〉大賞に水沼直樹弁護士、佳作(秋田真志賞)に田中拓と深見愛一郎各弁護士


大賞(ダイヤモンドルール賞)受賞者の水沼直樹弁護士(中央)、佳作(秋田真志賞)受賞者の田中拓弁護士(左から二人目)と深見愛一郎弁護士(右から二人目)。同賞審査委員の秋田真志弁護士(左端)、後藤貞人弁護士(右端)(2026年10月16日、大阪弁護士会講堂。撮影/刑事弁護オアシス編集部)。

 10月16日、午後6時より、大阪弁護士会講堂で、第1回ダイヤモンドルール賞の授賞式が行われた。大賞(ダイヤモンドルール賞)に水沼直樹弁護士(第一東京弁護士会)、佳作(秋田真志賞)に田中拓弁護士(香川県弁護士会)と深見愛一郎弁護士(栃木県弁護士会)がそれぞれ選ばれた。大賞には賞金10万円、佳作には賞金3万とそれぞれ副賞の盾が贈られた。

 ダイヤモンドルール賞は、大阪弁護士会の弁護士が中心となってつくる「ダイヤモンドルール研究会ワーキンググループ」によって、「刑事弁護における尋問に関する優れたレポートを表彰し、その考え方や尋問技術等を広く会員に共有し、弁護人の尋問技術の向上を図る」ことを目的として創設されたもので、本年がその第1回目である。応募作品は9作品であった。

 審査委員を、関西学院大学名誉教授の川崎英明氏、元裁判官の大西直樹、後藤貞人、小坂井久、小田幸児、秋田真志各弁護士が務めた。

 授賞式後、大賞の水沼弁護士が受賞事案について報告した。その後、パネル形式で審査委員全員による審査結果の報告、トーク形式による大西弁護士と秋田弁護士によるミニ講座「裁判官から見た尋問技術」がもたれた。

各受賞者のコメント

 大賞の水沼弁護士の事案は、鹿児島県南さつま市の港口で起きた小型漁船同士の衝突事故にかかわる業務上過失傷害等被告事件である。

 水沼弁護士は、受賞の喜びをつぎのようにいう。

 「このたび、第1回ダイヤモンドルール賞の大賞をいただき、誠に光栄に存じます。名だたる審査委員の先生方に評価していただけたことを、ありがたく思います。

 受賞事件では、船舶工学や物理学に関わる争点に向き合いました。専門家の見解を理解するだけでなく、その前提や検証方法を自分でも確かめようと、思考整理のために模型を制作しました。図らずも、模型は弁護団の議論を具体化し、専門家との対話を深め、裁判所とも問題意識を共有する手段となりました。弁護人や専門家証人等からも好評をいただいたことは、予想外の収穫でした。

 また、専門家の肩書や結論にとらわれず、その専門性が争点のどこまで及ぶのかを吟味したことも、尋問を考えるうえで重要でした。専門知を尊重することと、その限界を検証することは両立すると感じています。

 他の2つの受賞作には、私にとって目から鱗が落ちるものばかりで、それぞれ実践できる、まさにダイヤモンドの原石というべき知恵が宿っています。今回の受賞は、多くの方々の協力に支えられた一つの試行錯誤への評価と受け止めています。こうした経験や知見が互いに共有され、磨かれ、日本の刑事弁護の質の向上につながることを願っています」。

 佳作の田中弁護士の事案は、高松市にある大型商業施設での財布の窃盗被告事件で、不法領得の意思の存否を争ったものである。

 田中弁護士は、受賞が尋問技術の研鑽を続ける今後の励みとなったと、語る。

 「私は、修習時代に大阪刑弁の先賢の法廷活動に魅せられ、憧れ、たまたま行き着いた地方において、憧れた刑事弁護に少しでも近づくことを目指して自分にできる実践を重ねる、一弁護人です。

 このたび、ダイヤモンドルール賞創設と論考募集を知り、思わず前のめりに応募したところ、栄えある『秋田真志賞』を授与いただきました。修習中に法廷での姿に憧れ、弁護士としても何度か研修指導を受け、その背中を追いかけてきた者として、秋田真志さんの名を冠した賞を頂戴できたことは、何物にも替えがたい喜びであり、今後の励みです。

 受賞稿では、窃盗事件を題材に、【心得❶】「反対尋問は主尋問が勝負」、【心得❷】「謎解きは反対尋問のあとで」、【心得❸】「証人に敬意を払え」の3つのマイルールについて語っています。見出しだけではわからない心得に興味を持たれた方は、是非、ご一読ください。

 受賞に際し、審査委員の方々から、気づいていなかった自身の弁護人としての在り様や、無事にクリアできていたから良かったけれども本当はリスクを孕んでいた分岐点などをご指摘いただき、大変大きな学びをいただきました。

 今後も、憲法37条3項の求める『資格を有する弁護人』を目指して、技術の研鑽と心術の磨きを続け、少しでも先ゆく背中に近づきたい、そう決意を新たにする機会となりました。

 誠にありがとうございます」。

 同じく佳作の深見弁護士の事案は、宇都宮市で起きたAHT(虐待による乳幼児頭部外傷)が疑われた父親の傷害致死被告事件(AHT事件)である。

 深見弁護士は、賞へのチャレンジの想いを語った。

「おれの尋問は、ちゃんとできているのだろうか。1回うまくいったとしても、続けられるだろうか。これが授賞式で感じたことです。

 大賞をとった水沼さんとは、とある事件を一緒にやっていることもあり、発想はなんとなく分かっていました。ただ、事件に出てきた衝突した2隻の船の模型を、発泡スチロールを削って、色を塗って、約一週間続けて作り上げたことは、水沼さんらしいなと思うとともに、自分は手抜きしていたなという気持ちになりました。

 田中さんの論文は、追い打ちをかけました。いかにも怪しい万引き事件で、助手席のドアを開けたという事実に着目して、無罪を勝ち取ったことについて、おれにはできないな、と思いました。

 懇親会で、隣に座った無罪獲得で有名な某審査委員が、有罪判決の尋問が重要だみたいな話を、酔っ払いながらしていたことは、さらに追い打ちをかけました。

 尋問に留まらず、刑事弁護は、こうやって常に刺激を受けて高め合っていくものだ、と実感しました。

 ダイヤモンドルール賞は、某審査委員の思いつきで始まったようですが、おれは足りていないんだ、それが次のチャレンジのはじまりだ、ということを実感させていただく機会を与えていただきました。ありがとうございます」。

審査経過について

 審査委員を代表して秋田真志弁護士が、今回の審査についてコメントを寄せた。

 「尋問技術に特化した優れた論文に授与される第1回ダイヤモンドルール賞の大賞として、水沼直樹氏(第一東京弁護士会)の『専門性を精緻化せよ:専門家証言を〈人・前提・手法・射程〉で創り、解き、活かす』が選ばれた。

 今回は9編の応募があり、研究者、元裁判官を含む6人の審査委員が、「実用性・再現性(5点)」「技術的工夫(5点)」「着眼点の鋭さ(4点)」「分析力・論理(3点)」「文章表現力(3点)」の20点満点で採点のうえでディスカッションし、選考に当たった。力作揃いで議論は白熱したが、6名の審査委員のうち5名が最高得点をつけた水沼氏の論攷が大賞となった。船舶事故をめぐる過失の有無を争い、無罪を獲得した事件における尋問の工夫をレポートしたものである。どの審査項目でも高評価を得ており、大賞に相応しいすばらしい内容である。

 佳作にあたる秋田真志賞には、採点で高得点を得た4作が僅差で競り合い、決選投票が行われた結果、深見愛一郎氏(栃木県弁護士会)および田中拓氏(香川県弁護士会)の2作が選ばれた。前者はAHT事件における専門家証人に対する尋問の工夫により無罪を獲得した事例、後者は前科多数の被告人の軽微な窃盗事案について、目撃者(保安員)の反対尋問を成功させて無罪を勝ち取った事例であり、さまざまな尋問の工夫が高く評価された」。

 受賞作は『季刊刑事弁護』129号(2027年1月20日発行)から順次掲載予定である。

 なお、同賞は不定期開催であるが、第2回は来年に行われることが決まった。

(2026年10月27日公開)


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