学生と当事者——「肌感覚でわかる」ことの力
——甲南大学、京都女子大学、龍谷大学、立命館大学、獨協大学などの学生さんがこの問題に関心を持っているのは非常に頼もしいと感じています。学生にとって人質司法は身近な問題になっているのでしょうか。
笹倉 そんなことはないですね。いまだに「悪いことをしたのだから逮捕されるのは当たり前でしょう」と、うちのボランティア学生から言われてしまうこともあって、ガックリすることもあります。
——そういうときはどう答えられますか。
笹倉 人質司法サバイバー国会などに来て当事者の話を聞くと、まったく変わりますね。とくに第3回となる今年は、当事者のご家族によるパネルディスカッションを行ったのですが、これは学生たちに響いたようです。人質司法サバイバーのお母さんの話、娘さんの話が、すごく身につまされたと。
そういう肌感覚でわかることをしていかなければいけないのだと思います。「黙秘しているとなかなか出られない制度になっている」と言っても、たぶんピンときていない。けれども、実際に身体拘束された人の生活や、その家族の生活、気持ちは、とても訴求するんですね。その意味でも、当事者や家族と協働することは本当に大事だと思います。
取調べ録音・録画の「目的外使用」制限をめぐって
——それは本当に実感しますね。江口大和さんの本(『取調室のハシビロコウ——黙っていたら、壊された。ある弁護士の二五〇日勾留記』〔時事通信出版局、2026年〕)もとても心に響きます。ただ、江口さんの取調べの録画が法廷に出てきた一方で、最近また法務省がそれを制限する動きを始めています。
笹倉 再審制度改正で開示証拠の目的外使用の禁止を導入し、次は民事裁判でも、刑事事件における開示証拠の使用制限を法制審に諮問するとも言っています。法務省はその手始めとして、法廷での取調べの録音・録画の再生は避けるなど公開しない方向にするという通知を出したりする。自分たちの今の制度を維持するためには本当に手段を問わないなという現れです。これが本当に正当化できるのかは、私たちが問うていかなければいけません。
自分たちのミスを自分たちで隠すためにああいう動きをしているのは、見え見えです。開示証拠の目的外使用の禁止は、国家の透明性や説明責任に真っ向から反することですし、証拠は誰のものかという根本的な問題でもあります。これは変えなければいけないと思っています。
たとえば、アメリカやイギリス、韓国、台湾でもそうですが、透明性を確保することが権力の正当性や公平性を担保する、という考え方があると思うんですね。自分たちが何をしているのかを説明する責任を果たすことも、同じです。ところが日本では、何でも隠して市民から見えなくすれば正当性が確保できる、と思われています。それはとても問題ですし、追及していかなければいけないことです。
(「中」へつづく)
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(2026年10月19日公開)