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笹倉香奈

『オアシス・インタビュー』第2回

【1/3】えん罪救済センターとSBS検証プロジェクト は何を目指すのか

実務家と研究者との連携

インタビューアー:小石勝朗(フリーライター)


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笹倉香奈氏。甲南大学研究室にて。
笹倉香奈氏。甲南大学研究室にて。

1 えん罪救済センターの発足とその活動

 

小石 えん罪救済センターの話を中心にしながら、最近、特に力を入れて取り組まれている乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)についても、えん罪問題と関わってくることなので、お聞きしたいと思います。

 はじめに、一般にはまだ知らない人もいると思いますので、えん罪救済センターはいったいどんなことをする団体なのかをお話しください。

センター発足の経緯

笹倉 えん罪救済センターを一言で言うと、えん罪を訴えている事件について、えん罪救済を求める当事者から私たちに「これを調べてほしい」、「救済してほしい」という依頼があったときに事案を調査し、その支援ができそうだと判断した場合はさらに調査を進めたうえで、えん罪の救済活動を無償で行う団体です。えん罪の救済といっても既にいろいろな団体がありますが、私たちの団体は専門家が集まり、DNA鑑定など専門的な観点から事案を分析して、救済を検討していくところに特色があります。

 えん罪救済センターがモデルにしたのは、アメリカのイノセンス・プロジェクトです。主にDNA鑑定を使い、えん罪を訴える事件について無償で雪冤(せつえん)の支援をしている団体です。

 最初のイノセンス・プロジェクトは1992年にニューヨーク州で立ち上がりました。弁護士たちがロースクールの中にそれをつくり、ロースクールの学生たちと一緒にえん罪事件を調査し、裁判所など関係機関にその救済を訴えていく活動でした。

 イノセンス・プロジェクトは全米に広がっていき、現在では全世界に広がっています。その日本版が、私たちえん罪救済センター(イノセンス・プロジェクト・ジャパン)ということです。

 

小石 なぜこういう団体を立ち上げたのでしょうか。そのきっかけと、発案から今日に至るまでの経緯を教えてください。

 

笹倉 アメリカでは1990年代に既にイノセンス・プロジェクトが誕生し、かなりの成果を挙げていることがいろいろな文献などを通して日本にも伝わってきていました。DNA鑑定で雪冤を晴らした事件だけで360件以上あり、それ以外も含めると何千件もの事件を救済していると言われています。

 日本を振り返ってみたときに、民間の団体で実際に専門家が集まり、えん罪の支援だけではなく実際の弁護活動を無償でできる団体は他にありません。日本弁護士連合会(日弁連)の人権擁護委員会には再審部会があり、支援事件については手厚い支援をしていますが、それだけでは足りません。「イノセンス・プロジェクトの動きを日本にも採り入れたい」ということが市民や研究者の間で言われていました。

 たまたま2015年5月ぐらいに、日本でも立命館大学でイノセンス・プロジェクトを立ち上げる具体的な動きが出てきました。そこに弁護士たちが加わり、私もその中に入りました。2015年の1年間をかけて、どういう組織にするべきか、どういう活動をしていくべきかを議論して2016年4月に立ち上げたというのが経緯です。

小石 そのときに中心になったのが、立命館大学で情報工学を専門としている稲葉光行さんですね。

笹倉 実は稲葉先生にイノセンス・プロジェクトを紹介したのは、供述心理学の浜田寿美男先生です。浜田先生は、甲山事件からずっとえん罪問題に関わってこられていた方です。司法において科学的な考え方が正しく使われていないと感じていた稲葉先生に対して、浜田先生が「アメリカでは、司法を科学によって検証するイノセンス・プロジェクトがある。日本でもやるべきではないか」と提案したのだそうです

 そういう経緯から稲葉先生がニューヨークの第1号イノセンス・プロジェクトに飛んでいき、いろいろな話を聞いて、そのあとでサンディエゴにあるカリフォルニアのイノセンス・プロジェクトにも行かれました。

 具体的に進めていくときに、ちょうど私も足利事件の弁護人である佐藤博史先生などを通じてこの話を小耳に挟み、稲葉先生に連絡を取りました。そして、いろいろな人と結び付いて、組織を立ち上げました。

 1年間の準備期間は少人数でやっていましたが、2016年4月に立ち上げる直前に、東京と大阪でシンポジウムを開きました。そのときに、弁護士の先生にもうちょっと入ってもらわなければいけないと思って声かけをしたところ、京都弁護士会の遠山大輔先生、石側亮太先生、池田良太先生、辻孝司先生、大阪弁護士会の後藤貞人先生、正木幸博先生などがすぐに協力してくれることになりました。今はその他にも比較的若手で刑事弁護を熱心にされている弁護士も協力してくれています。

えん罪救済センターの設立シンポジウム
えん罪救済センターの設立シンポジウム。えん罪事件を担当する弁護士と研究者が意見を交わした。右端が笹倉香奈さん(2016年3月、東京都内、撮影/小石勝朗)。

 その後、刑事法の研究者も増えましたし、元科学捜査研究所(科捜研)の平岡義博さんのほかに科捜研にいた専門家も入ってくれました。心理学者では、浜田寿美男先生のほかに、山田早紀さんが事務局として頑張ってくれています。いろいろな分野の方が協力してくれています。今、運営委員は30人ぐらいです。お名前をここで全員あげることはできないのですがえん罪救済センター運営委員一覧)、いずれも各分野の第一線のすばらしい先生方です。運営委員ではないけれども協力してくれている専門家もいます。

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用語解説

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