免田事件の再審無罪から40周年、熊本大で免田事件番組の上映会


免田事件再審無罪判決から40周年を記念して開かれた上映会(2023年7月23日、熊本市の熊本大学)

 死刑確定事件で初めて免田栄さん(2020年、95歳で死亡)が再審無罪となって40年。免田さんの34年余にわたる長い闘いを追ったドキュメンタリー番組「執念~生き抜いた死刑囚~」(RKK熊本放送、1984年)の上映会が2023年7月23日、熊本大学で開かれた。免田さん夫妻などから提供された事件の資料を保管する熊本大学文書館が企画、約40人が参加した。

 番組は、RKK熊本放送が研究目的に限り、学内での使用を許諾した映像6作品のうちの一つで、再審無罪で釈放されて約1年後に放送された。獄中生活の中で「自分の命も欲しいが真実はもっと欲しい」とつづった手記を俳優の大滝秀治さんが朗読。免田さん本人のインタビューと合わせて、死刑執行の恐怖におびえながら真実を求める執念を浮かび上がらせた。日本弁護士連合会や支援した人々の談話、日本の戦後の移り変わりを織り交ぜながら、免田さんが再審無罪を勝ち取るまでの34年余を描いた。再審公判中、八代拘置支所内の免田さんの様子を捉えたスクープ映像も挿入されている。

ドキュメンタリー番組の解説をする牧口敏孝さん(2023年7月23日、熊本大学にて)

 上映後、取材を担当し現在、熊本大学文書館の市民研究員を務める牧口敏孝さん(免田事件資料保存員会)が解説。「暴行、脅迫によって捜査側のストーリーに沿った供述調書が作られるなど、冤罪の構図は今も続いている」とした上で、裁判員裁判になって「裁く側にも裁かれる側にもなる。誰もが冤罪の当事者になり得る」と述べた。

 また、熊本大学法学部の岡田行雄教授が再審制度を巡って「戦前の規定をそのまま引き継いでいる。再審開始決定が出ても検察側の抗告によって上級審で取り消され、再審の実現までには長い時間がかかる」と、問題点を指摘した。

 会場からは、「疑わしきは罰せず」という刑事裁判の鉄則の意義や、再審法改正への研究者のかかわり方、事件報道の在り方などについて、活発な質問が出た。

(2023年07月28日公開)


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