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4(2007年)

[最優秀賞]

被告人に寄り添う情状弁護

谷口太規たにぐち・もとき埼玉弁護士会・58期

窃盗被告事件被告人に寄り添う情状弁護

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[優秀賞]

再度の執行猶予をめざして

紺野明弘こんの・あきひろ福島県弁護士会・57期

窃盗被告事件

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[優秀賞]

有罪証拠の中に潜んでいた無罪証拠

小澤進おざわ・すすむ長野県弁護士会・57期

強制わいせつ被告事件

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[論評]

 第4回目を迎えた季刊刑事弁護新人賞には、自薦・他薦を含め全国から7名の応募がありました。応募総数は決して多くありませんが、長野県と大阪から各2名、東京、埼玉、福島県から各1名と、地域的に広がりが出たのが特徴的でした。司法修習の期では、57期3名、58期4名でした。

 2006年11月4日に選考委員会を開き、厳正な審査の結果、標記のとおり最優秀新人賞1名、優秀新人賞2名が決定しました。

 今年度も選考委員がすべての応募作に目を通し、採点していきました。その結果、今年度は上位3名の入賞者が比較的スムーズに決まりました。

 なかでも、最優秀新人賞を受賞した谷口太規氏(埼玉弁護士会・58期)の応募作は、選考委員全員が票を投じ、文句なしの最優秀賞となりました。谷口氏の熱意ある誠実な弁護活動は非常に高い評価を得、「刑事弁護の域を超越した」と絶賛する声があがりました。また、登場する検察官、裁判官の言動では日本の刑事司法の歪みを、生活保護のケースワーカーの言動では生活保護行政の問題点を描くなど、その文章力を評価する声も多くありました。一審の裁判官には思いが通じず実刑となりましたが、高裁で別の弁護人が引き継いで見事に再度の執行猶予を得られたのは、一審段階での谷口氏の活動があってこその成果でしょう。

 優秀新人賞に選ばれた紺野明弘氏(福島県弁護士会・57期)の応募作も、やはり再度の執行猶予を得るための情状弁護です。執行猶予付判決を受けた4カ月後に万引の再犯をしてしまったという、ややもするとあきらめてしまいがちな事件について、再度の執行猶予の可能性を信じ、社会内で更生するための環境を整えていった熱心かつ丁寧な弁護活動が高く評価されました。

 小澤進氏(長野県弁護士会・57期)の応募作は、強制わいせつ被告事件について無罪判決を勝ち得るまでの弁護活動を描いたものでした。谷口氏や紺野氏の弁護活動が「ここまでやるか」と選考委員を驚かせたのに対し、小澤氏の弁護活動はあくまでオーソドックスなものでした。しかし、被告人の言い分を聞き、開示された調書を丁寧に検討し、被害者の特性から供述の信用性を崩していくなどの、当たり前に行うべき(ただし実際にはなかなかできない)活動を着実に積み重ねた結果、無罪判決を得たという点が評価されました。

 その他の応募作も熱意ある活動は高く評価されましたが、上記各受賞作には及びませんでした。

 今回は、図らずも、再度の執行猶予をめざした情状弁護の活動を描いた応募作が最優秀賞と優秀賞に選ばれる結果となりました。このことからもおわかりになるとおり、必ずしも無罪や準抗告決定などの結果だけを重視して評価しているわけではありません。今回も、無罪判決を得た事件が選に漏れていますし、他方、最優秀賞となった谷口氏は自らが弁護人だった一審では結果を出せませんでした。しかし、その情熱溢れる活動が高く評価されたのです。

 選考委員一同、次年度もより多くの方々からの応募を切に願っています。