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6(2009年)

[最優秀賞]

法科大学院教育の成果

佐藤力さとう・つとむ静岡県弁護士会・60期

建造物等以外(動産)放火被告事件

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[優秀賞]

初めての国選弁護事件を通じて

船崎まみふなさき・まみ東京弁護士会・60期

公務執行妨害被告事件

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[優秀賞]

親子関係の修復を目指して

髙橋和央たかはし・かずひさ札幌弁護士会・59期

強盗致傷保護事件

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[特別賞]

初めての最高裁 ──「有罪ありき」の責任能力判断を問う

浦﨑寛泰うらざき・ひろやす長崎県弁護士会・58期

傷害致死被告事件

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[論評]

 第6回目を迎えた季刊刑事弁護新人賞に、今回は例年の2倍から3倍に上る18名もの応募がありました。内訳は、応募時の地域別で東京5名、大阪3名、札幌3名、福島2名、長崎、佐賀、愛知、旭川、静岡各1名でした。前回は、札幌、東京、横浜、長野、福島、岡山の6地域からの応募でしたが、今回は9地域に増え、地域的な広がりがさらに出たのが特徴でした。また、都市型公設事務所の常勤弁護士から6名、ひまわり基金法律事務所から2名、法テラスのスタッフ弁護士から3名と、18名中11名を占めました(応募時点)。

 2008年11月23日に選考委員会を開き、厳正な審査の結果、標記のとおり、最優秀賞1名、優秀賞2名、特別賞1名を選定させていただきました。今回も、選考委員がすべての応募作に目を通し、採点していきました。

 最優秀賞に選ばれたのは、佐藤力さんでした。レポートをご覧いただければおわかりのとおり、法科大学院出身の新規登録1年目の方です。法科大学院で学んだ弁護技術と刑事弁護人魂を投入しきった献身的な弁護活動、そしてその結果、成果を出したことが、すべての選考委員から高い評価を受けました。「一に接見、二に接見」「現場が命」「黙秘権は被疑者にとって唯一の武器」など、すぐに役立つ標語が身についています。静岡からは初の入賞となりました。

 優秀賞に選ばれたのは、船崎まみさん、髙橋和央さんです。船崎さんは、非常に献身的な情状弁護活動が高い評価を集めました。オーソドックスな活動ではありますが、勾留中のために家賃が払えないにもかかわらず、大家さんとかけ合って住居を確保したり、あるいは勤務先に赴いて雇用の維持を確約していただいたりという地道な弁護活動は、なかなかできることではありません。気持ちのこもった弁護活動と、その結果、執行猶予に結びつけた活動が評価されました。髙橋さんは、札幌からの初入賞です。少年事件において、少年の内心に踏み込んでいく過程が高く評価されました。初回接見で自分の人生を語ったり、糾問的な審判官に対して「もっと少年の話に耳を傾けてほしい」と言うなど、2年目とは思えない堂々とした対応ぶりもよく、読んでいて面白いとの評もありました。

 今回初めて贈られた特別賞の浦﨑寛泰さんは、責任能力判断に関する歴史的な最高裁判決を、初の上告審事件で獲得したことが高く評価されました。ただ、鑑定医とのコンタクトをとるなど、責任能力に関する弁護活動の過程では大変な努力をされたと思いますが、上告審であるがゆえに、活動内容に対する評価という点では、上記の最優秀賞、優秀賞と同等の評価をするには躊躇を覚えるという意見もあり、その成果に対して「特別賞」という形で表彰しようという結論になりました。

 最優秀賞の佐藤さん、優秀賞の船崎さんは、本賞発表の時点ではすでに法テラスへ赴任している予定とのことです。浦﨑さんを含めて、法テラスのスタッフ弁護士が3名も受賞されたということになります。刑事弁護の担い手として、法テラス・スタッフの役割はますます大きくなると思います。そのような時代に、対応できる実力を着実につけていることが、今回の結果からもわかりました。

 最後になりましたが、今回の応募作はどれも質が高く、全体的な底上げがされていることを強く感じました。地域的な広がりも進んでいます。これからも、全国で質の高い弁護活動が展開され、選考委員に悲鳴を上げさせるような多数の応募があることを期待します。