9(2012年)

[最優秀賞]

目撃者は実はいなかった ──裁判員裁判控訴審破棄一部無罪

山本了宣やまもと・りょうせん大阪弁護士会・62期

監禁・強制わいせつ致傷被告事件

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[優秀賞]

「生き直しの場」を模索すること

菅原直美すがわら・なおみ札幌弁護士会・63期

窃盗被疑事件

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[優秀賞]

「足」で稼ぎ「足跡」でたぐり寄せた否認事件の勾留請求却下と不起訴処分

炭谷喜史すみたに・よしふみ大阪弁護士会・61期

覚せい剤取締法違反(使用)被疑事件

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[特別賞]

2つの重大な違法捜査が認定された事例

三澤太雅みさわ・たいが横浜弁護士会・61期

覚せい剤取締法違反(使用)被告事件

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[論評]

 第9回目を迎えた季刊刑事弁護新人賞に、今回も北は札幌から南は鹿児島まで24名もの応募があり、地域的にも数的にも多くの応募をいただき、選考委員が嬉しい悲鳴をあげるほどでした。内訳は、応募時の地域別で、札幌1名、仙台2名、東京6名、横浜1名、新潟1名、長野1名、静岡1名、大阪3名、三重1名、奈良1名、岡山1名、山口1名、福岡1名、大分1名、鹿児島2名でした。前回は9地域11名でしたので、地域的にも数的にも倍増の感があり、若手弁護士に刑事弁護活動が着実に定着しつつあることを実感できました。

 2011年10月23日に選考委員会を開催し、厳正な審査の結果、標記のとおり、最優秀賞1名、優秀賞2名、特別賞1名を選ばせていただきました。今回も、選考委員がすべての応募作品に目を通し、評価をさせていただきました。とくに、数が24通であったうえに、いずれのレベルも高く、本当に甲乙つけがたいものばかりでした。

 そのなかで最優秀賞に選ばれた山本さんは、初めての否認事件が裁判員裁判であり、一審では有罪判決を受けたものの、二審では一部無罪を獲得されたという事案です。その成果もさることながら、一審の反省のうえに立った、さらなる弁護活動を深めていったという経緯のなかに、その創意・工夫が示されていると思いました。ことに、記録を子細に検討し、そのなかで店長の嘘を暴いていった経過には、闘う刑事弁護の姿を感じ取れました。

 優秀賞に選ばれた菅原さんは、情状弁護ではありますが、被疑者の窃盗の動機に疑問を抱き、福祉関係者との同行面会や受入先の施設の訪問など、まさに被疑者の「生き直しの場」を模索する弁護活動を行われたといえるでしょう。また、菅原さんは、奈良修習の際に、2011年秋にご逝去された故髙野嘉雄弁護士(以下、「故髙野弁護士」といいます)から刑事弁護の薫陶を受けられたとのことですが、今回の応募のなかには故髙野弁護士から教えを受けた弁護士が多く、故髙野弁護士の遺訓が全国各地に行き渡っていることも実感しました。あらためて、故髙野弁護士のご冥福をお祈りしたいと思います。

 優秀賞に選ばれた炭谷さんは、尿から覚せい剤反応が出たという決定的に不利な状況で、かつ、被疑者の弁明も一見すれば荒唐無稽なものであったにもかかわらず、被疑者を信じ、まさしく「足でかせいだ」弁護活動をされました。ことに、被疑者が覚せい剤を無理やり使用させられたラブホテルについては、被疑者が具体的には覚えていないというなかで、ラブホテル街を一軒一軒訪ねて歩くという努力には、敬服の念を禁じえません。

 特別賞に選ばれた三澤さんの事案は、尿の鑑定書を違法収集証拠として証拠排除され、無罪判決が一審で確定したというものでした。ことに、期日間整理手続のなかで数々の証拠開示請求を行ったことが、無罪につながったといえ、証拠開示請求の重要性を示す一例として、貴重な成果をあげられた活動だったと思います。

 今回の応募作品のなかには、先輩弁護士の適切なアドバイスがあり、それが成果に結びついているものが少なからずありました。若手弁護士の行動力と先輩弁護士の経験とが連携をとるということは、 これからの弁護活動を活性化するための重要な視点だと思います。このような新人の活躍を励みとして、先輩弁護士との連携を深めつつ、質の高い熱心弁護がよりいっそう展開され、次回は、さらに広範囲な地域や層から多くの応募があることを祈りつつ、選考のご報告に代えさせていただきます。