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大麻取締法違反の無罪を争う「大藪裁判」の第2回公判開かれる。裁判官交替へ


第2回公判後開かれた報告集会で発言する大藪龍二郎さん(2022年3月25日、群馬会館。編集部撮影)。

 前橋地方裁判所で、大麻取締法の所持罪による逮捕の違法性と大麻取締法そのものの憲法違反を主張して無罪を争う裁判が、現在進行中である。ほとんどの大麻裁判では、被告人が罪を認めて一件落着で済まされているので、本格的に大麻取締法の憲法違反を問う裁判はめずらしく注目が集まっている。

 3月25日、前橋地方裁判所で、大麻取締法の所持罪で起訴された陶芸家の大藪龍二郎さんに対する第2回公判が開かれた。当日は、傍聴席を上回る傍聴人が詰め掛けた。

 公判では、水上周裁判官から人事異動で裁判官の交替がある旨告げられた。このため次回(5月11日午後1時30分から)は、新しい裁判官のもとで更新手続後、警察官に対する証人尋問が行われることが決まった。

 この事件はどのようなものか。

 2021年8月8日、群馬県での陶芸イベントの帰り道、大藪さんが運転に支障をきたす程の眠気を感じたため路側帯に車を停めて仮眠していたところ、近隣住民の通報を受けて臨場した警察官から職務質問を受けた。警察官は大藪さんの所持品検査を実施して彼のバッグから「大麻草のようなもの」を発見したため、任意に提出されたチャック付ビニール小袋入り植物の簡易鑑定を実施。その結果、THC成分が検出されたため、その場で大藪さんを現行犯逮捕した(この逮捕手続が違法ではなかったかについても裁判で争われている)。23日間の勾留の末、8月27日に、大麻取締法24条の2第1項の所持罪で起訴された、同年10月26日、第1回公判が行われた(詳しくは、長吉秀夫氏の「大藪大麻裁判 第1回公判リポート」参照)。

第2回公判後開かれた報告集会。左から、長吉秀夫さん、大藪龍二郎さん、丸井英弘弁護士、石塚伸一弁護士(2022年3月25日、群馬会館。編集部撮影)。

 第2回公判後、裁判所の前にある群馬会館で報告集会がもたれた。被告人の大藪さんのほか、裁判支援者で作家の長吉秀夫さん、丸井英弘、石塚伸一両弁護士が出席し、第2回公判の内容と今後の方針について報告した。

 冒頭、大藪さんは、「たくさんの人が傍聴にきていただいて力になります」と感謝したのち、「裁判官の交替はたいへん衝撃的であった。しかし、更新手続などがあり、もう一度裁判をやるんだという気持ちで、時間をかけて裁判ができると、気を取り直してがんばりたい」と挨拶した。そして、「裁判では、陶芸家という一人のプロフェッショナルの義務として、おかしいことはおかしいと言っていかなければならない。そして、公正な裁判を求めたい」と、裁判に対する意気込みを語った(詳しくは、被告人冒頭陳述書同追加陳述書参照)。

 つぎに丸井弁護士は、公正な大麻裁判を求める署名活動で2,582名の署名が集まった(3月23日現在)旨公判で陳述したことを報告し、このように多くの方がこの裁判に関心を寄せていることは審理をきちんと行わなければならないという意味で裁判官に対してよいプレッシャーになると述べた。また、起訴状にいう「大麻を含有する植物片」がなんであるかの説明を検察側に求めていくことなど弁護側主張の要点を解説。とくに、「職務質問が違法であることになれば、違法収集証拠となり、押収物の証拠能力がなくなって、検察側の立証の柱がなくなるので、無罪ということになる」と、次回公判で行われる警察官の証拠調べの重要性を強調された。

 さらに、龍谷大学で刑事法の教鞭をとっている石塚弁護士は、覚せい取締法と違って所持罪はあっても使用罪がないという大麻取締法の特色をあげて、それは自己使用のために所持することは罪としないことを意味するのだと指摘した。また、罪を問うためには社会的実害の証明が必要であるが、大麻の自己使用のどこに害があるのか、有害性はタバコやアルコールの方がずっと大きいことが科学的に証明されていること、さらに大麻の医療上の効用も科学的に証明されていること、そして世界では大麻使用について非刑罰化・非犯罪化が進んでいることなど、大麻政策の歴史と世界の動向を紹介し(同編『大麻使用は犯罪か?』に詳しい)、「この裁判では、憲法に違反している大麻取締法自体が裁かれる裁判である」と結んだ。

 集会の最後に、長吉さんから「長い裁判が予想されるが、法廷の外も法廷であるという気持ちを持ってみなさんと一緒に裁判を支援していきたい。大麻はSNSに馴染むテーマである。こころの豊かさを大切にしながら、SNSなどを駆使して裁判の支援やその連携の新しい形をつくり、活動を盛り上げたい」と、締めくくった。

(2022年03月29日公開) 


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