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元受刑者や受刑者の家族が語る「刑務所ラジオ」/監獄人権センターが府中刑務所の地元局で番組

小石勝朗 ライター


「刑務所ラジオ」第2回の収録風景。受刑者の家族(手前)が心情を語った=2022年4月、東京都府中市、撮影/小石勝朗。

 多くの人にとっては縁遠い刑務所のことを知ってほしいと、NPO法人・監獄人権センターは「刑務所ラジオ」と題した番組をコミュニティFM局で始めた。元受刑者や受刑者の家族に率直な心情を話してもらい、更生や社会復帰、さらには贖罪のあり方を広く考えるきっかけにしたいと企画した。東京・府中刑務所の地元のFM局を選び、防災をはじめ地域と刑務所のかかわりについてもテーマにするという。

「普通の人がちょっとしたきっかけで」

 4月中旬に行われた「刑務所ラジオ」第2回(4月25日放送)の収録。ゲストは男性受刑者の母親と妹で、逮捕されたと知った時の状況に始まり、接見時の様子、刑が確定して刑務所に移ってからのやりとりなどを語った。

 「息子が『刑務所の同房の人がみんなすごくいい人だ』と話すのを聞いて認識が変わりました。普通の人が、ちょっとしたきっかけで事件を起こしてしまうのだと」と母親。だからこそ「希望を見出せれば、やり直せる」と信じ、息子に限らず受刑者の「更生の手助けをしていきたい」と思いを明かした。

 第1回(4月11日放送)には元受刑者の男性が出演した。覚せい剤取締法違反などの罪で2回服役した経歴を告白。覚せい剤の使用に至った経緯や状況、刑務所内での人間関係の難しさなど、自らの体験を吐露した。男性は第2回の番組にも参加した。

「刑務所の外でしか聞けない番組」

 「刑務所ラジオ」は、監獄人権センター事務局の塩田祐子さんが発案。ソーシャル・ジャスティス基金の助成を受けることが決まり実現した。

 「刑務所の中だけに流れる『刑務所ラジオ』があります。だったら、刑務所の外でしか聞けない『刑務所ラジオ』があっても良いのでは、と考えました」(塩田さん)。YouTubeを利用する方法もあったが、社会へ向けて発信するために、公共の電波に乗せることにこだわった。

 発信地として、国内最大級の府中刑務所が立地する東京都府中市を選び、地元のコミュニティFM局「ラジオフチューズ」(87.4MHz)の放送枠を確保した。同局が、市民が誰でも番組を制作・発信できる「パブリックアクセス」に取り組んでいることにも共鳴した。

地域とのかかわりにもスポット

 「刑務所ラジオ」は第2、4月曜の午後10時から30分間、オンエアされている。当面は4~6月の計6回で、元受刑者や受刑者の家族のほか、刑務官や刑務所の医師、支援者らの出演を予定している。府中刑務所は府中市と防災協定を結んでおり、職員の体育施設が災害時に市民の避難所になっていることから、地域との関係にもスポットを当てたい考えだ。条件が整えば、7月以降の放送継続も視野に入れている。

 番組のパーソナリティーを務める塩田さんは「基本は、おしゃべり。台本はありますが、ゲストにはざっくばらんに話してもらい、本音を引き出したい。リスナーには番組のタイトルを見て『何だろう』と思ってもらい、肩肘張らない形で刑務所と社会のかかわりについて考えてほしい」と話している。

 番組は全国どこからでも聴取可能。パソコンの場合は、リスラジにアクセスし、「全国のラジオ局」→「関東」→「ラジオフチューズ」を選択する。スマートフォン・タブレットの場合は、リスラジのHPから無料アプリをダウンロードしたうえで「選局」ボタンで「ラジオフチューズ」を選択する(詳しくは、こちらを参照)。放送した番組は一定期間経過後に、監獄人権センターのホームページにアップするという。

*元府中刑務所長の手塚文哉氏が執筆した『再犯防止をめざす刑務所の挑戦』には、府中刑務所の再犯防止の取組みなどが紹介されている。(刑事弁護オアシス編集部)

◎著者プロフィール
小石勝朗(こいし・かつろう) 
 朝日新聞などの記者として24年間、各地で勤務した後、2011年からフリーライター。冤罪、憲法、原発、地域発電、子育て支援、地方自治などの社会問題を中心に幅広く取材し、雑誌やウェブに執筆している 。主な著作に『袴田事件 これでも死刑なのか』(現代人文社、2018年)、『地域エネルギー発電所──事業化の最前線』(共著、現代人文社、2013年)などがある。

(2022年04月22日公開) 


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