〈袴田事件・再審〉公判の候補日として地裁が12回の日程を提示/証人尋問を実施の見通し、来年3月までに結審へ

小石勝朗 ライター


事前協議の概要を説明する弁護団の西嶋勝彦団長(右から2人目)ら。一番右は袴田巖さんの姉・秀子さん=2023年9月12日、静岡市葵区の静岡県弁護士会館、撮影/小石勝朗

 袴田事件(1966年)の再審公判へ向けて、死刑が確定した元プロボクサー袴田巖さん(87歳)の弁護団と裁判所、検察による第5回事前協議が9月12日、静岡地裁(國井恒志裁判長)で開かれた。地裁は公判の候補日として10月27日から来年3月27日にかけて12回の日程(期日)を提示し、審理を3月までに終わらせる意向を表明した。弁護団の早期結審の要求は退けられた形で、検察が提出予定の新たな証拠をめぐって証人尋問が実施される見通しになった。

判決は早ければ来年6月ごろか

 事前協議は非公開で行われ、終了後に弁護団が静岡市内で記者会見して概要を説明した。

 弁護団によると、静岡地裁が提示した再審公判の候補日は、10月27日を皮切りに、11月と12月、来年1月、2月にそれぞれ2期日、同3月に3期日で、最終が3月27日になっている。いずれの期日も午前11時~午後5時。10月27日に初公判を開くことについて、弁護団は受け入れると回答したが、検察は態度を明確にせず、次回9月27日の事前協議で決まる。

 國井裁判長は「来年3月末までに審理を終わらせたい」と述べたという。その通りに進めば、判決は来年6月ごろにも出るのではないかと、弁護団はみている。

検察は味噌に漬かった血痕に赤みが残る可能性を立証

 検察は3月の再審開始決定の確定後に、死刑判決が袴田さんの犯行着衣と認定した「5点の衣類」に付いていた血痕の色合いについて補充捜査をした。そこで得た7人の法医学者による共同鑑定書や、醸造、写真、光学の専門家の調書類を再審公判へ提出し、袴田さんの有罪を立証する方針を示している。

 検察は8月末に地裁へ提出した意見書で「1年以上味噌に漬けられた5点の衣類の血痕に赤みが残ることは不自然ではないこと」を主張立証する予定だと改めて表明した。

 具体的には「血痕の赤みを消失させる方向での化学反応の速さは、血痕化に伴う(血液の)凝固、乾燥の有無・程度や、味噌中の酸素濃度によって大きく左右される」と強調。5点の衣類の発見当時の鑑定書に血痕が「濃赤色」「赤褐色」との記載があることについて、光源の種類や明るさなど色の見え方に影響する観察条件によって「黒・茶褐色系が強い傾向の色合いに見えることもあれば、赤みを感じさせる色合いに見えることもある」との論理を展開している。

 これに対し、弁護団は8月末に地裁へ提出した意見書で、検察が血痕の色合いについて、これまで「多数の法医学者ら専門家を動員し、さらに大がかりな実験をするなど、考えうる限りの立証活動をすでに十二分に行い尽くしている」と主張した。共同鑑定書の内容も「抽象的な可能性論を重ねているに過ぎない」と批判し、検察の新しい証拠の取調べ請求を却下するよう地裁に求めていた。

弁護団「争点や証人を絞って早期結審を」

 地裁が12の期日を示したことにより、検察の新しい証拠が審理のテーマとして扱われ、「最大の争点になりそう」(弁護団の笹森学弁護士)だ。鑑定人らの証人尋問は年明けになる見込みで、次回の事前協議で検察と弁護団の双方が証人を請求するという。弁護団は、東京高裁の差戻し審で「1年以上味噌に漬かった血液に赤みが残ることはない」とする鑑定書をまとめた旭川医科大の清水恵子教授(法医学)らの尋問を求めるとみられる。

 記者会見で弁護団の間光洋弁護士は「結審までの道筋がついたことは評価したい」とする一方で、「検察の有罪立証は許されず、今後は争点や証人を絞って早期に結審するよう求めていく」と力を込めた。

 袴田さんの姉・秀子さん(90歳)は「1年以内に良い結果が出ることを期待している。これで終わりだと思うと嬉しくて仕方がない」と笑顔を見せた。

【袴田事件の再審決定後の動き】は以下を参照(編集部)
〈袴田事件・再審〉検察の新証拠は「血痕の色」の共同鑑定書など16点/弁護団は却下を要求へ、裁判所の対応が焦点に
〈袴田事件・再審〉検察が「有罪」を立証の方針/弁護団は「蒸し返し」と強く反発、判決まで長期化のおそれ
〈袴田事件・再審〉再審公判は11月以降か、裁判所が事前協議の日程を追加/検察は依然、立証方針を明かさず

◎著者プロフィール
小石勝朗(こいし・かつろう) 
 朝日新聞などの記者として24年間、各地で勤務した後、2011年からフリーライター。冤罪、憲法、原発、地域発電、子育て支援、地方自治などの社会問題を中心に幅広く取材し、雑誌やウェブに執筆している 。主な著作に『袴田事件 これでも死刑なのか』(現代人文社、2018年)、『地域エネルギー発電所──事業化の最前線』(共著、現代人文社、2013年)などがある。

(2023年09月21日公開)


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