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「袴田巖さんに恩赦を」/国会議員連盟が異例の要請


袴田巖死刑囚救援議員連盟
法務省保護局長に要請書を手渡す「袴田巖死刑囚救援議員連盟」の塩谷立会長(前列右から2人目)=2020年3月10日・法務省、撮影/小石勝朗

 1966年に静岡県で一家4人が殺害された「袴田事件」で死刑が確定した元プロボクサー・袴田巖さん(84歳)に恩赦を実施するよう、超党派の国会議員でつくる「袴田巖死刑囚救援議員連盟」が3月10日、中央更生保護審査会(中更審)に要請した。特定の個人への恩赦適用を国会議員が求めるのは異例とみられるが、袴田さんが高齢であるうえ、再審請求審の行方が不透明なことによる精神的な負担に配慮する必要があると考え、人道的な見地から行動を起こしたという。

 袴田さんは2014年3月、再審請求が静岡地裁でいったんは認められ、47年7カ月ぶりに釈放された。しかし、2018年6月に東京高裁が再審請求を逆転棄却し、特別抗告している最高裁の判断によっては死刑執行を前提に再収監されるおそれが出ている。

 弁護団は再収監を阻止して袴田さんの命を守ることを最優先に、昨年3月に恩赦(刑の執行免除)を出願。今年1月には新天皇即位に伴う特別基準恩赦(同)にも出願した(昨年3月の恩赦出願については、こちらの記事を参照 https://www.keiben-oasis.com/3920)。

 議連の要請書は「袴田氏に『刑の執行の免除』が認められるべきことは、恩赦願書などで述べられている通りで、(願書の提出を受けた)静岡地検検事正も中更審への上申にあたり『恩赦相当』の意見を付したものと期待している」との見解を表明。中更審に対し「更生保護法による関係人への審問を行うなど、必要な調査を慎重かつ十分に実施したうえで、公正な判断を」と求めるとともに、「前例にとらわれることなく、法務大臣に対し恩赦を実施すべき旨の申出をするよう要請する」と結んでいる。

 要請には、議連から会長の塩谷立・衆院議員(自民)、事務局長の鈴木貴子・衆院議員(自民)、大口善徳・衆院議員(公明)らが参加。同審査会を所管する法務省保護局の今福章二局長が応対した。

 議連メンバーは「昨年3月の恩赦出願から1年近くが経っている。袴田さんは高齢でもあり、速やかな手続きが必要だ」「袴田さんは逮捕されてから半世紀近く勾留されており、再収監のおそれがあるのは心理的に良くない」などと発言。同席した袴田さん弁護団の戸舘圭之弁護士は「釈放されて平穏に生活している現実がある。再審請求とは別であり、公平や正義回復の観点から恩赦を考えていただきたい」と強調した。

 これに対して、今福局長は「審査会(中更審)は独立性が高く、(結論の)方向性に意見を言うのは憚られる」と前置きしながら、「出願の意味合いや趣旨を踏まえて審理していくのは当然のこと。早めに審理することも一般論としてあり得る。審査会の独立性を害さない範囲で、要望の内容は伝えたい」と述べた。与党議員による要請だったためか可能な限りで前向きに答えようとする姿勢がうかがえ、恩赦適用に期待を持たせた。

 要請には、袴田さんを支援する8団体でつくる「袴田巖さんの再審無罪を求める実行委員会」のメンバーも参加し、一日も早く恩赦を実施するようアピールした。

 要請当日は、静岡県浜松市で暮らす袴田さんの84歳の誕生日。「浜松・袴田巖さんを救う市民の会」の寺澤暢紘さんは「袴田さんは安定した生活を送っている。今朝は『世界が落ち着いてくればいい』と話しており、自分の命を必死で守っている印象だ。冤罪被害者が(死刑で)命を落とすことがないよう留意してほしい」と訴えた。

(ライター・小石勝朗)

(2020年03月19日公開) 


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