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袴田巖さんの恩赦を出願 再収監阻止へ「死刑の執行免除」を求める


袴田巖さんと姉の秀子さん
83歳の誕生会で、プレゼントに笑顔を見せる袴田巖さんと姉の秀子さん(2019年3月9日、浜松市、撮影/小石勝朗)

 1966年に静岡県で一家4人が殺害された「袴田事件」で死刑が確定した元プロボクサー・袴田巖さん(83歳)と姉の秀子さん(86歳)が3月20日、恩赦の願書を静岡地検へ提出した。新天皇の即位に伴い今秋の実施が見込まれる恩赦の対象になるかどうかが焦点だ。

 2014年3月27日に静岡地裁が出した再審開始と死刑・拘置の執行停止(釈放)の決定によって、袴田さんは47年7カ月ぶりに身柄の拘束を解かれたが、昨年6月に東京高裁は再審開始を取り消した。これを受けて、検察が死刑の執行停止と釈放の取り消し(再収監)も主張しているため、恩赦による刑の執行免除を求めた。

 恩赦出願の理由書で袴田さんの弁護団は「静岡地裁で再審開始決定が出た事実は十分に考慮されるべきだ」と指摘し、死刑判決が「控えめに見ても誤判である蓋然性が高い」と訴えた。静岡地裁が認定した警察による証拠捏造の疑いに触れて「国家機関が45年以上もの間、無実の個人を拘束して陥れた」「世界的に見ても極めて稀なほどに強度の人権侵害がなされていた」と強調した。

 再審請求審で明らかになった問題点として、逮捕直後の袴田さんと弁護人との接見の様子を警察が盗聴・録音していたことや、「5点の衣類」のズボンのタグに記された「B」がサイズではなく色を示すとの重要な証拠を検察が隠していたことを挙げ、「捜査の適正、公判における適正な審理という面から見て、極めて重大な問題を含んだ事件」とも断じた。

 そのうえで、釈放されたとはいえ再審が実現しないために袴田さんの精神的な負担は続いているが、無罪の確定までには「まだ途方もなく時間がかかる」との認識を示し、「このような拷問とも呼べるような状況は、直ちに改善されるべき」として、恩赦がその解決策になると位置づけた。

 また、釈放から5年間、秀子さんと平穏に生活してきた袴田さんが再収監されれば「世界的にも類を見ない悪しき前例となる」と警鐘を鳴らし、「このような人権侵害が発生する可能性を避けて予防するためにも、恩赦による恩典を袴田氏に受けさせるべきである」と結んでいる。

 袴田さんの恩赦出願は1989年、2005年に続いて3回目。この2回では減刑を求めていたが、当時とは大きく状況が異なっているため、現状に即した判断がなされるよう改めて出願することにした。

 恩赦出願に対しては「前提となる罪を認めることになる」として反対する意見があるが、袴田さんの弁護団や支援団体は「再収監を阻止し、袴田さんの命を守ることを最優先に考えた」と説明している。最高裁に特別抗告している再審請求は、恩赦が認められたとしても取り下げずに続ける方針だ。

 今後、静岡地検は意見を付けて中央更生保護審査会へ上申し、恩赦の可否はここで審査される。秀子さんは「大いに期待しています」と話した。

(ライター・小石勝朗)


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