第27回参議院選挙/各党の選挙公約に「再審」を見る


 

 7月3日、第27回参議院選挙が公示された。選挙区と比例代表にあわせて522人が立候補した。最大の争点は物価高対策であるが、再審法改正について各政党がどのように選挙公約や政策集で表明しているか、各ホームページで探ってみた。

自民党

 「日本を動かす 暮らしを豊かに」と題する選挙公約では、「自然災害はもとより、年々凶悪化・巧妙化する犯罪から断固として国民を守り抜きます」として、犯罪被害者等の支援や再犯防止、拘禁刑下の矯正施設の体制整備などの強化を謳っているが、再審にふれた箇所はない。

 そこで、政策の詳細を集めた「総合政策集2025 J−ファイル」 (自由民主党/政務調査会 2025年7月2日)を見ると、876番目にようやく「刑事再審制度の検討」が出てくる。

 「一部の再審請求事件について審理の長期化が指摘されていることなどに鑑み、再審手続が非常救済手続として適切に機能することを確保するため、再審請求事件の実情も踏まえつつ、いわゆる再審請求審における証拠開示や再審開始決定に対する不服申立てと再審制度の在り方について、法制審議会における議論も注視しながら、迅速に検討を進めます」。

 「法制審議会における議論も注視」するという文言が気にかかる。会期末の最終段階で、自民党が、「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(会長:柴山昌彦衆議院議員)がまとめた「再審法改正議連案」の共同提案に参加しなかったのはこのためであろうか。

公明党

 「2025参院選重点政策 やると言ったら、やり切る。」と題する選挙公約の中には入っていないが、「2025参院選政策集」(全体版)で、「4.誰もが安心して暮らせる社会」の8項目に、「犯罪防止対策と人権擁護に向けた司法の充実」との見出しを掲げ、つぎのように記している。

 「再審手続きの長期化等が指摘されていることから、法制審議会において、再審請求審における証拠開示の在り方や再審開始決定に対する検察官の不服申立ての在り方などについて、再審請求の実情も踏まえつつ、多角的な視点から十分かつ迅速に検討を進めます」。

 ここでも、「法制審議会」が登場する。公明党も「再審法改正議連案」の共同提案に参加していない。

立憲民主党

 「物価高から、あなたを守り抜く」と題する選挙公約にはないが、「立憲の政策がまるごとわかる立憲民主党 政策集2025」で、「法務」の項目を設けて、その「人権尊重の刑事司法制度」で、つぎのように、現行の再審制度の問題点を明記し、再審法改正の目的を丁寧に記している。

 「・えん罪被害者の速やかな救済のため、施行以来一度も改正されていない刑事訴訟法第4編(再審法)を抜本的に見直します。再審請求審における全面的な証拠開示制度を創設して再審の門戸を開き、手続規定を整備して裁判所ごとに審理の格差が生じる『再審格差』をなくすとともに、検察官の不服申立てを禁止して審理の長期化を防ぐなどの見直しを進めます。」

 「・えん罪を防ぐため、取調べの録音・録画対象の全事件・全過程への拡大や、取調べに弁護人を立ち会わせる権利の規定の創設など、取調べの抜本的改革に取り組みます。」

 さらに、「人質司法」にも言及している。

 「・『人質司法』とも指摘される被疑者及び被告人の身体拘束について、人権保障と真実発見のバランスの観点から課題を整理し、対応を検討します。」

日本維新の会

 「社会保険料から、暮らしを変える」と題する選挙公約や「政権公約2025 基幹政策(コア・ポリシー)」の中にはないが、「維新八策2025 個別政策集」の中で、「司法制度改革」の項目を設けて、「冤罪(えんざい)根絶のため、参考人も含めてすべての捜査において取り調べの全面可視化を行うとともに、国際基準である取り調べ時の弁護人立ち合いの制度化に努め、再審制度の速やかな整備を目指します」とする。

国民民主党

 「手取りを増やす夏。」と題する選挙公約の中に触れられていない。

共産党

 「物価高騰から暮らしを守り、平和で希望が持てる新しい日本を」と題する選挙公約の中で触れている。

 「5、ジェンダー平等──個人の尊厳と人権が尊重される社会に」の「(2)あらゆる分野の人権保障を」で「再審法を改正します。」と宣言し、つぎのように記している。

 「袴田さん無罪判決は、捜査機関による自白強要と証拠捏造(ねつぞう)を断罪しました。二度とこのような国家権力による重大な人権侵害を引き起こさないために、全面的な証拠開示と、再審開始決定に対する検察による不服申し立ての禁止を制度化するなど、再審法改正を早急に行います」。

 さらに、「各分野の政策」の100項目ある中の「74、共謀罪廃止・盗聴法拡大・刑訴法『改正』問題」で、再審法改正の要点について詳しく触れている。

 「2019年5月20日には、冤罪の再発防止や被害者救済を求める『再審法改正をめざす市民の会』が結成され、日本弁護士連合会の働きかけも背景にして2024年3月12日『えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟』が設立されました。袴田さん無罪判決では、捜査機関による自白強要と証拠捏造を断罪しました。一方、法務省は、法制審議会へ再審法改正を諮問し、7月から本格的な議論を行うとしています。二度とこのような国家権力による重大な人権侵害を引き起こさないために、問題の先送りは許されません。すみやかに法改正を行うことは国会の責務です。再審請求における証拠開示の制度化、再審開始決定に対する検察官抗告の禁止など、再審法抜本改正の重要な柱を盛り込んだ議員立法案を作成し、立憲民主、国民民主、れいわ、共産など野党6党で共同提出しました。日本共産党は、再審法の抜本改正となる議員立法の成立に全力を挙げます」。

 市民の会や日本弁護士連合会の動きに言及しているのは、共産党だけである。

 その他、盗聴法、司法取引の廃止、代用監獄の廃止、被疑者の長期拘禁を防ぐための起訴前保釈の導入、検察による証拠隠しを許さない証拠の全面開示、捜査機関の裁量による例外を認めない全事件・全過程の取調べの可視化、取調べへの弁護人の立会いなどの抜本的改革を求めている。

れいわ

 「れいわ、以外ある? さっさと消費税廃止、もっと現金給付」と題する選挙公約を見た。再審について触れた箇所が、同公約の「05 あらゆる不条理に立ち向かう」の項目の中にあるのではないかと探したが、見当たらなかった。

参政党

 「日本人ファースト参政党 これ以上、日本を壊すな!」と題する選挙公約にはなかったので、「参政党の政策2025」の「6 国の仕組み・立法/行政/司法」の項目を見たが、選挙制度について触れているだけで、司法関係に言及するところはまったくなかった。

社民党

 「がんこに平和! ミサイルよりコメを!」と題する選挙公約にはなかった。

保守党

 「政党マニフェスト 失われた30年を終わらせよう」と題する「日本保守党の重点政策項目」には見られなかった。

(2025年07月08日公開)


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