4月16日、少年法改正案可決、衆院法務委員会で

新倉修 弁護士・青山学院大学名誉教授


起立多数で少年法改正案が可決された衆議院法務委員会(4月16日、衆議院インターネット中継・ビデオライブラリより)

少年法改正国会を傍聴する(その2)
 衆議院法務委員会審議(2021年4月7日)

 少年法改正案は、衆院法務委員会(義家弘介委員長)で、4月2日に趣旨説明、16日に可決された。参考人質疑を冒頭に掲げ、「基本法」が半月審議で完了し、野党の修正案にも原案にすら与党議員が意見表明しなかったのは、異例かつ驚異であった。原案可決(自民・公明・国民)の後、付帯決議(与野党4党提案)で推知報道や資格制限の問題点は共有された。しかし上川陽子法相が掲げたトーチ(No One Left Behind)の行方は知れない。

 4月7日の審議では、与党議員の質疑にハイライトを当てよう。その後(9・14・16日)与党議員の発言はない。

 ところで、法制審の専門部会(少年法・刑事法〔少年年齢・犯罪者処遇関係〕部会)は3年半で29回(3分科会でも合計29回の会合)を重ねたが、「与党・少年法PT」は2019年11月から14回の会合を経て3点の「合意(基本的な考え方)」を2020年7月30日に作成した。これは直ちに、法制審専門部会第28回会議(8月6日)に配布された。最終回に日弁連推薦の委員・幹事4名の「意見書」が提出されたが、2名の反対を除き全員一致で「答申案」が採択され、10月29日の法制審第188回総会は、欠席者3名を除く出席者全員一致でこれを可決した。

 盛山正仁議員(自民)は、法務副大臣の経験もあり、能でいうシテ(法案提出者)の語りを引き出すワキに徹した。法案は、多様な意見を聴き十分な時間をかけ、法制審全員一致で採択された答申に基づくと披露された。これが、犯罪被害者を含む国民の声に応えるという(与党議員による)評価の基調となった。

 宮崎政久議員(自民)は、義家弘介副大臣ともに政務官として森まさこ法相を支えたが、自民党政務調査会で少年法適用年齢の引下げを取りまとめたと自己紹介をした上で、国民投票法・公職選挙法・民法など「基本法」の統一やわかりやすさ、新聞の世論調査の引用による「引下げ論」を持ち出して(ツッコミ)、原案の通奏低音である「成人としての責任と可塑性のある18・19歳に対する少年法適用の維持と特例導入」の主題を巧妙に引き出した。また、前日の参考人質疑での武るり子・少年犯罪被害当事者の会代表と川出敏裕・東京大学教授の意見を紹介して、ワキを固めた。さらに、「特定少年」として第5章を設けた点、成年とされる「特定少年」に対するぐ犯規定の不適用と保護処分に「犯情の軽重」をキャップとして導入した点、資格制限の特例を適用しない点などを取り上げて、反対論を牽制した。また、武発言(18歳は成人だから犯罪に向き合い真摯に反省すべき)を引いて推知報道解禁を支持し、附則の見直し期間の趣旨を確認した。

 山田賢司議員(自民)は、本会議で代表質問を担当したが、犯罪統計と実感とのギャップを警察庁に質問し、学校での暴力行為を文部科学省に尋ね、学校での規範意識教育の必要を訴え、保護司制度(上川法相トーチの火影)の根本的改善を求めた。少年法が抑止力になっていない点(武発言)を取り上げ、被害者の発言を重く受け止めるという刑事局長答弁を引き出した。

 北側一雄議員(公明)は、まず京都コングレスの成功を祝し京都宣言(上川トーチの本体)に言及した。その上で、公選法改正を提案し、年齢に関する法令348本を振り分けたと手の内を明かし、「与党・少年法PT」の合意を受けて法制審答申案がつくられたと位置づけた。その際の共通認識は、①少年法1条2項に触らず18・19歳に少年法を適用し、家庭裁判所に全件送致することと、②この年齢の社会的地位に変化が生じ、重大な罪を犯した場合は18歳未満とは違った扱いを必要としたことだったと述べた。また強盗罪のように犯情が広い犯罪では、逆送の場合も十分な調査を尽くすよう求めたのに対して、最高裁家庭局長は「家裁調査官による調査を尽くす」と約束した。

 大口善德議員(公明)は、少年法運用の現状に問題はないという川出発言を引用した。特定少年の原則逆送の拡大の趣旨(必要的逆送ではない)を質問して、「立場に応じた取扱いを定める」との法相回答を得た。18歳以上への保護処分の性格・適用要件、試験観察の運用では、「家裁で調査を尽くし要保護性を考慮した適切な処遇選択などで現行法と大きく変わらない」という刑事局長答弁を得た。しかし、少年院収容の3年期間も行為責任による上限(キャップ)であって、その範囲内で適切な処遇が行われるという刑事局長答弁は期待に過ぎない。資格制限の見直しでは、建前(責任主体への厳しい追及)と利害(社会復帰の促進)の調整を法相は確約した。

 「厳罰化」の懸念をめぐる闇は深い。推知報道の弊害は放置され、資格制限の見直しは先送り、家裁の調査や試験観察・鑑別の形骸化には「現行法」と変わらないという回答しかない。死亡事件の被害者遺族の「謝罪と処罰」を求める声に、現行法でも対応できるという答弁はない(賠償命令や国家補償は法改正が必要)。「規範意識を高め、反省を深める」という法相の反復答弁は、経験科学や脳科学の知見との突合せを避けている。

*少年法改正案は、4月20日、衆議院本会議で賛成多数で可決された。審議は、来週から、舞台を参議院法務委員会に移す予定である。

◎執筆者プロフィール
新倉修(にいくら・おさむ)
 1949年生まれ。早稲田大学法学部卒業。國學院大学教授を経て青山学院大学教授(2001年~2017年)。現在、弁護士(東京弁護士会所属)、青山学院大学名誉教授。主な著作に、『少年「犯罪」被害者と情報開示』(現代人文社、2001年)、『導入対話による刑法講義(総論)』(第2版、不磨書房、2003年)などがある。
*新倉先生の古稀を記念して論文集『国境を超える市民社会と刑事法』が編まれている。

(2021年04月20日公開)


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