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5月6日、少年法改正法案、参議院法務委員会で参考人質疑

新倉修 弁護士・青山学院大学名誉教授


参議院法務委員会(2021年5月6日、参議院インターネット中継・ビデオライブラリより)

少年法改正国会を傍聴する(その4)
 参議院法務委員会参考人質疑(2021年5月6日)

 少年法改正案が衆議院から参議院へ送付される前を振り返っておこう。

 衆議院の法務委員会では、参考人質疑(4月6日)と東京家庭裁判所の見学(4月13日)を含めて、2週間14時間の日程(4月2・6・7・9・14・16日)で、修正案と原案の一括審議と起立採決へと慌ただしく進行し、附帯決議も、資格制限や推知報道の一部解禁に残された課題があることを認めつつも、全会一致ではなく自民・公明・立憲・国民の共同提案であった。総じて丁寧な審議とは程遠い扱いであった。

 4月23日の参議院本会議(山東昭子議長)で趣旨説明後に6名の議員による質問があり、菅義偉総理大臣と上川陽子法務大臣がこもごも答弁した。舞台は法務委員会(山本香苗委員長)に移った。

 連休を挟んで、5月6日に、奇しくも衆議院法務委員会の参考人質疑から1か月後に、参議院法務委員会でも、参考人質疑が行われた。橋本隆・東京大学教授、川村百合・弁護士、大山一誠・自営業(少年院経験者)の各氏がそれぞれ発言し、質問は、山下雄平(自民)、真山勇一(立憲)、伊藤孝江(公明)、清水貴之(維新)、川合孝典(国民)、山添拓(共産)、高良鉄美(沖縄)、嘉田由紀子(碧水)の各議員が行った。私は、川村参考人に随行し傍聴した。なお、5名の委員(自民・公明)の入替えがあったのが印象的であった。

 法制審議会専門部会の委員であった橋爪参考人は、とりわけ民法の年齢要件の引下げによって18・19歳は親の監護教育(少年法2条の「保護者」は親権者に限らない)を離れ、自立的な意思決定が可能な主体とされ、保護処分の前提を欠くと断定しつつも、従来のような保護処分は困難になったと、改正趣旨を曖昧にぼかした。また社会的な期待が変化したので、原則逆送を拡大し、保護処分は、「行為責任」(条文では「犯情の軽重」という)に基礎づけられるものとなった。これによってその限界も劃されるものとなるが、これは、本人に有利なものであっても刑事責任の範囲内でなければ本人の意志に反して課すことができないからだと説明した。さらに、特定少年の推知報道は、確定判決を経なくても、逆送決定と公訴提起の「二重のフィルター」を経るので、(家裁送致や無罪判決の可能性を無視しても)一定の合理性があると断言した。

参議院法務委員会で発言する川村百合参考人(2021年5月6日、参議院法務委員会、参議院インターネット中継・ビデオライブラリより)

 川村参考人は、少年法は有効に機能しており、立法事実がないとし、改正案は「厳罰化」というよりも「刑罰化」であって、「少年院教育は甘い」という言説は根拠を欠くと切り込む。とりわけ非行少年は知的能力や精神的発達が十分ではなく、社会のセーフティーネットからはじかれた成育歴の例が多い。子どもの成長発達権の保障を目的とする少年法を改正すれば、科学主義に基づく家裁調査官の調査は弱体化する。また世間は前科者に冷たく、推知報道は更生を妨げる。被害者の救済には、実効性を高めることが必要であり、被害者と犯罪少年の双方の救済に取り組むべきだと結んだ。

 大山参考人は、3歳の時に父母が離婚し、貧困とDVの連鎖の末、3度の保護処分を受け、18歳で少年院に収容された。19歳で出院し、25歳から、少年院での講話などを通じて、非行少年への支援活動に携わり、2回渡米して20か所の施設を見学した。少年法改正には、①期間をあらかじめ決めた施設収容では反省が深まらないこと、②少年院収容者数は10年間で半減し、再犯者は刑務所経験者の方が多いこと、③推知報道は立直りを妨げるので、被害者を含めた総合的な施策が必要なことなど、問題を指摘した。

 各議員は参考人に対してそれぞれ質問した。以下は質問とその回答で、( )内に参考人の名前を付した。

 山下議員は、少年院と刑務所の違いを取り上げた。体育系の少年院は私語禁止・懲罰(単独室・正座・反省文・収容期間が1か月単位で伸びる)・日記や課題作文を書き内省を求められるが、刑務所は私語自由で刑期が終われば出所できる(大山)。子どもの権利条約によって将来の少年の利益保障が少年法の目的であり、余計な介入は排除すべきだ(川村)。民法は基準となる基本法であり、少年院収容も3年の期間内で柔軟に収容期間を短縮できるので、矯正の効果に影響はない(橋爪)。

 真山議員は、特定少年(18・19歳の少年)の位置付けを尋ねた。法制審では、年長少年という概念は使用済みなので、名称を決めなかったが、中間類型としての実質を今後は盛り込みたい(橋爪)。非行少年には被害体験と加害の連鎖が見られ、自尊感情が乏しいので、少年院の矯正教育では、まず被害体験を受容し、社会の側も非を認め、自尊感情を育て、真の反省に結びつける処遇が重要だ(川村)。推知報道には抑止力がなく、逆に孤独にして再非行に追い詰める逆効果もあり、疑心暗鬼になって仕事を変えてしまう例がある(川村)。未成年だから名前が出ないという意識はなかった(大山)。

 伊藤議員は、「厳罰化」や「逆送対象事件の調査」を取り上げた。法制審では厳罰化という評価はなかった(橋爪)。最高裁が「簡にして要を得た調査票を」と指導しているので、2000年改正以降、科学主義に基づく社会調査が先細りになったから、同じ懸念がある(川村)。出院後の生活では、不良交遊を断ち切ったが、戻った町ではうわさになってアルバイト先を探したら断られた(大山)。

 清水議員は、被害者への謝罪を取り上げた。自分の経験では被害者に手紙を書くことも禁止されたので、被害者との話合いを整えるシステムが必要だ(大山)。法制審では、「与党・少年法検討PT」での政治的な話合いとは無関係に、理論的な検討で紛糾していた(橋爪)。

 川合議員は大人と子どもとの線引きを取り上げた。民法が基準だ(橋本)というのに対し、社会的コンセンサスでは20歳が大人で、児童福祉法も22歳までの収容継続に改正した(川村)。世論調査で「少年法が甘い」というのは、現実とズレている(橋爪・川村)。就業支援や更生のためのプログラムも、少年院では法務教官との年齢差や収容者も未成年という自覚があるので効果的だが、刑務所では内省を深めるプログラムは無理ではないか(大山)。

参議院法務委員会参考人質疑——右より橋本隆、川村百合、大山一誠各氏(2021年5月6日、参議院法務委員会、参議院インターネット中継・ビデオライブラリより)

 山添議員は、民法と少年法との関係は政策判断だとした意味を尋ねた。民法上の監護を離れるから保護処分も責任を基礎とし、推知報道も18歳を大人として扱うから報道の自由を優先させてよい(橋爪)。報道がリンチとなる例があり、被害者と加害者を共に高める方向をめざし、「忘れられる権利」も規定すべきだ(川村)。特定少年を「ぐ犯」規定から外すと、家庭で虐待されている例では最後のセーフティーネットがなくなる(川村)。本気で非行少年に向き合う法務教官に感動した(大山)が、収容期間の上限を予定すると、少年院での処遇効果は落ちる(川村)。

 高良議員は、2018年の民法の成年年齢引下げにも反対で、消費者教育の充実や取消権の法制化も大学学費への支援も実現していないとして、少年法改正を疑問視した。18・19歳は自立的な主体だが未成熟という二面性があり、責任を上限として保護するものだ(橋爪)。消費者保護が不十分だと、被害に遭った少年は他人への転嫁や非行に走る可能性もある(川村)。実際には自立できていない18・19歳もいるので国民を説得してほしい(大山)。刑務所と比較すると、少年院の方が再非行防止に効果的だが、実際には、帰住先がなかなか決まらず、居場所がないと孤立して再非行に陥るので、社会資源を増やすことが肝要だ(川村)。

 嘉田議員は、立法事実をただした。民法改正が立法事実であり、健康保護での飲酒・喫煙とは問題が違う(橋爪)。犯罪白書での虐待体験などの統計は氷山の一角で、少年院在院者のほとんどが身体的・精神的な虐待経験があり、ポイントは親権の有無ではなく、主たる養育者との愛着関係である(川村)。

*参議院法務委員会では、5月11日、13日、18日と、10時間程度の審議が予定されている。

◎執筆者プロフィール
新倉修(にいくら・おさむ)
 1949年生まれ。早稲田大学法学部卒業。國學院大学教授を経て青山学院大学教授(2001年~2017年)。現在、弁護士(東京弁護士会所属)、青山学院大学名誉教授。主な著作に、『少年「犯罪」被害者と情報開示』(現代人文社、2001年)、『導入対話による刑法講義(総論)』(第2版、不磨書房、2003年)などがある。
*新倉先生の古稀を記念して論文集『国境を超える市民社会と刑事法』が編まれている。

(2021年05月13日公開) 


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