公益財団法人日弁連法務研究財団は、研修会「意外と身近なサイバー捜査~越境する捜査と個人情報をめぐって」(全5回)を開催


 10月16日から、公益財団法人日弁連法務研究財団は、研修会「意外と身近なサイバー捜査~越境する捜査と個人情報をめぐって」(全5回)を開催する。

 近年、データの保管場所が、オンプレミス(自社等で保有する機器)から、ネットワーク上のクラウドに移行している。クラウドを利用した場合、実際にデータが保管される場所は、国内ではなく、海外となる可能性がある。

 捜査当局が、海外から情報(データ)を入手する場合、国際司法共助による方法があるが、2021年2月、最高裁は警察が司法共助によらずにダイレクトにデータを取得した場合でもその証拠能力を肯定すると判断した。

 こうした国外からのデータ取得について、海外でも対応は分かれており、米国や欧州では法律等によって規律を加える方向が示されているところである。

 令状による取得の場合はともかく、警察官が街路上で任意の所持品検査の延長で私人のスマートフォーンのデータを検査したとき、海外データへのアクセスが発生していることがある。更にそのデータの任意提出を求めると、海外からのデータ移転の可能性がある。一方、警察の伝統的な法執行のあり方は、変化していない。

 個人情報については、個人情報保護法、ヨーロッパのGDPRなど、プライバシー保護の観点からの法規制の必要性が高まっており、法改正が進展している。その一方で、ICTの発展により個人情報を含むデータは、国境を超えて容易に移転されるようになった。

 この研修はこうした個人情報に関する混沌とした法状況のなか、データ移転・データ収集という切り口を共通の視点に置きながら、様々な法分野から法実務上の問題点について情報を提供し、プライバシー保護の観点からの法規制に関する注意喚起を促すために企図されたものである。

○開催方法:オンライン開催のみ

○日時・内容:

・第1回=「FC2事件最高裁決定」
 日時:2021年10月16日(土)16:00~18:15
 講師:水谷恭史氏(弁護士)/コメンテータ:斎藤司氏(龍谷大学)
 2021年2月1日、捜査機関による越境的捜査並びに包括的データ差押えの適法性が争われた「FC2」事件につき、最高裁は証拠排除しないとの判断をしました(LEX/DB文献番号25571273)。決定が内包し、積み残した解釈上、実務上の問題点を掘り下げ、今後の課題を明らかにする。

・第2回=「捜査関係事項照会」
 日時:2021年11月20日(土)16:00~18:00
 講師:指宿信氏(成城大学)/コメンテータ:稲谷龍彦氏(京都大学)
 GDPR(欧州一般データ保護規則)の十分性認定を2019年に日本は受けているが、その際にも欧州から問題を指摘されていたのが、大量の個人データを、司法審査を経ずに取得する捜査関係事項照会である。かかる捜査手法の問題点を指摘し、立法の必要を説く。

・第3回=「国際法から見た越境捜査」
 日時:12月11日(土)16:00~18:00
 講師:石井由梨佳氏(防衛大学校)/コメンテータ:四方光氏(中央大学)
 他国に所在するデータへのダイレクトなアクセスは一国の法解釈で解決できる問題ではなくなっている。越境捜査での証拠排除を否定した最高裁決定について国際法の観点からこれを検討する。

・第4回=「個人情報保護から見た越境捜査」
 日時:2022年1月19日(水)16:00~18:00
 講師:板倉陽一郎氏(弁護士)/コメンテータ:横田明美氏(千葉大学)
 ①日本で保有する個人データを、外国からの越境捜査等に対応して提供することが本人との関係で許されるか、②海外で保有する個人データを、日本からの越境捜査等に対応して提供することが本人との関係で許されるか、という双子の問題を中心に、パブリックアクセスを巡る議論動向も踏まえて解説する。

・第5回=「欧州の動向とプロバイダーの責任」
 日時:2022年2月24日(木)16:00~18:00
 講師:丸橋透氏(明治大学)/コメンテータ:加藤尚徳氏(KDDI総合研究所)
 2018年に施行されたGDPR(欧州一般データ保護規則)は個人情報保護の越境的性格を突きつけることになった。最終回では、プロバイダーに保護に関するゲートキーパ的役割を負わせようとする欧州の動向を参考に、越境的な捜査の規律のあり方を紹介する。

○参加費:無料

○申込方法:以下の申込サイトからお申し込む。
 後日、オンラインによる参加方法等の詳細について、ご登録いただいたメールアドレス宛てにご案内。
 https://forms.gle/UHjvPTZaDNWdwNBy7

○主催:公益財団法人日弁連法務研究財団

○研修のお知らせ:https://www.jlf.or.jp/2021/08/23/kenshu10160224/

(2021年10月07日公開)


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