大藪大麻裁判の第5回公判 弁護人が鑑定人へ大麻鑑定の経過・方法などを尋問


公判終了後の報告集会で、大麻鑑定について解説する石塚伸一弁護士(2022年11月8日、群馬会館にて)

 大藪大麻裁判の第5回公判が、11月8日午後1時30分より、前橋地裁で開かれた。大麻取締法の大麻所持で現行犯逮捕された大藪龍二郎さんの車の中から発見された2つのパケにはいっていた「植物片」が同法にいう「大麻」にあたると鑑定した群馬県警科学捜査研究所職員(鑑定人)に対する証人尋問である。

 大麻鑑定は、現場での簡易鑑定に続いて本鑑定が行われる。本鑑定は植物組織の形態学的検査と大麻に含まれる三大成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビノール(CBN)、カンナビジオール(CBD)が含まれているかどうかの成分分析の2つで行われる。形態学的検査は、顕微鏡によって大麻草特有の「剛毛(ごうもう)」があるかどうかをみるものである。また成分分析は、薄層クロマトグラフィー(TLC)など測定装置を使ってあらかじめ用意された標準品の成分分析表と当該試料のそれとを比較することによって、三大成分が含有されているかどうかを確認する。

 はじめに、検察官が、鑑定の経緯、鑑定方法、鑑定書などについて職員に質問した。それに対して鑑定人は、2つの「植物片」が大麻取締法にいう「大麻」であることを確認した、と証言した。このあと弁護側から1時間にわたり、証拠開示請求で開示された鑑定経過を記した資料などの内容について詳しく質問した。

 弁護人は、成分分析について、2つの植物片の検査時間が違っている理由、両者の分析表がほとんど同じである点などを質した。さらに、これまで1万回以上鑑定を行っているというが、大麻でないとする鑑定をした経験があるかどうかを質問し、鑑定人はほとんどないとしたが、具体的なことは「記憶にない」とあいまいな回答をした。

 公判後の集会で、石塚伸一弁護士は、今回の公判での質問の意味をつぎのように語った。「尋問の中で標準品の作り方、鑑定時間、鑑定書の内容について、いろいろ疑問点が出てきた。公判で鑑定人が回答したことは重要な証拠になるので、今後、その公判調書を専門家に分析していただいて、この鑑定が本当に適正に行われたか、また鑑定結果が正しいかどうかを検証していただこうと思う」。

 今後、弁護人がこの鑑定方法や鑑定結果に関して、どのように主張するのか注目される。

公判終了後の報告集会で、裁判の感想や今後の方針などを述べる大藪龍二郎さん(右)と司会の長吉秀夫さん(2022年11月8日、群馬会館にて)

 集会の最後に、大藪龍二郎さんは、今回の裁判ついての感想とともに傍聴に駆けつけた支援者にお礼の言葉を述べた。さらに「忙しい中、僕の裁判のために出てきてくれた鑑定人には本当に感謝したい。次回は、逮捕前後の状況について、逮捕した警察官の証言と自分の事実認識とが相当食い違っているので、その点について反論したい」と述べた。

 裁判は、今回で鑑定人の証拠調べが終了して、前半の山場を越えたといえる。次回から、弁護側は、逮捕手続の違法性について本格的に主張・立証することになる。

 次回は、2023年1月24日(火)午後1時30分より、前橋地裁で行われる予定である。傍聴が抽選になる場合、午後12時半くらいから整理券が配られる。

(2022年11月30日公開)


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