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京都・当番弁護士を支える市民の会、20周年記念集会


ひとまず区切りをつけたい

 2018年10月28日、京都弁護士会館にて、京都・当番弁護士を支える市民の会(会長・生田勝義立命館大学教授)の集会が、「『当番弁護士』は何を変えたか」をテーマで行われた。

 当番弁護士制度は、1990年に大分県弁護士会ではじめて名簿制によるものが発足し、つづいて福岡県弁護士会が待機制で続いた。その後、全国のすべての弁護士会に広がった。当時は、国選弁護制度は起訴後しかなかった。そのため、捜査段階での弁護活動を活性化すべく、イギリスなどの制度を参考にして、弁護士会が創ったものが当番弁護士制度である。2009年、被疑者国選弁護制度(対象事件は法定合議事件)が法制化され、幾度かの法改正で、現在、全勾留事件までにひろがった。

 当番弁護士制度は、弁護士が逮捕段階に1回無料で被疑者に接見に行き、法的助言をするものである。その費用は各弁護士会が負担している。そのため、弁護士会の内部では、財政負担や待機・出動など物理的負担に対して不満があった。また、市民の間には、〈なんで悪い奴を弁護するんだ〉という批判が以前からあった。そうしたことから、東京、大阪、福岡、札幌など全国各地で、当番弁護士制度の意義に賛同し、それを支援する市民の会が立ち上がった。1998年、京都でも、当番弁護士を支援しようと、市民が集まって会をつくった。

 残念ながら、今回は解散集会でもあった。国の被疑者国選弁護制度が充実してきたこと、さらに、会の活動と京都弁護士会とのパイプ役であった塚本誠一弁護士が8月に病気で亡くなったことなどから、ひとまず区切りをつけようということになった。

当番弁護士の役割と成果

 今回は、同会の発足集会でゲストであった甲山事件の冤罪被害者・山田悦子さん、大分県弁護士会で当番弁護士制度の創設に尽力した徳田靖之弁護士が発言者として招かれた。集会は、石塚伸一龍谷大学教授の司会で始まった。

 最初に徳田弁護士から、弁護士としての出発点から当番弁護士創設に至る経緯を話された。当初は、情状弁護を志したが、実際の裁判では被告人を反省させるだけの単なる儀式にすぎないことがわかって絶望した。その後、みどり荘事件を担当して、一審段階で、被告人と充分なコミュニケーションがとれなかったために、有罪判決となってしまった。その反省をふまえて、弁護士は何をなすべきかを考えた。自身も含めて弁護士全体の弁護技術の底上げを目指して、小さな弁護士会でもやれることをやろうと、名簿制の当番弁護士制度を創設したという。

 冤罪を晴らすために、事件の当事者一人一人にきちんと向き合って、時間をかけて証拠を一つひとつ吟味していく方法しかない、いまのような公判前整理手続では争点が絞られ、裁判が迅速に進められると、それは難しくなる。今後は、冤罪防止のために、再審事件と再審法整備に力を入れたいと発言を締め括った。

 つぎに、山田悦子さんは、刑事弁護、刑事裁判が抱えている課題について、甲山事件ではじめて逮捕された時のことを例に話された。逮捕直後、3人の若い弁護士がやってきて、黙秘しろといわれたが、その意味がよくわからなかった。あとでその意義を理解したが、その当時は、本当にどうしたらよいか迷って、結局、警察に〈虚偽の自白〉をさせられた。弁護士との信頼関係を持てなかったことが大きな原因でなないかと指摘した。

 また、今回の司法制度改革では、司法の大改革があるのではないかと期待したが、司法への市民参加は、裁判員制度でお茶を濁しただけで、改革は中途半端である。冤罪を防ぐためには、取調べの可視化は絶対必要で、しかも取調室だけでなく、その前後が重要であるという。最終的には弁護人の立会いが欠かせないと、現在の可視化改革は不十分だとした。刑事裁判の本当の改革には、人々の権利意識を高めることが必要で、そのために法教育の重要性を訴えた。

 最後に、京都弁護士会刑事弁護委員会委員長の遠山大輔弁護士が、当番弁護士制度は何を変えたかについて、制度の未来、人の未来、私の未来の3点にわたって語った。

 制度の未来については、被疑者国選制度は逮捕段階からすべての事件を対象とする第4段階へ向けての準備がはじまったので、それを確実なものにしたい。人の未来については、制度を担う弁護士をどう確保するか、量、質の両面について、全員でやっていくのか、ある程度かぎられた数の弁護士でやるのかが検討課題であるとした。今年は、京都弁護士会では、勾留全件準抗告運動をやったが、そうした裁判所の意識や弁護士の意識を高めることからはじめたという。

 最後に、私の未来について語った。取調室の可視化は当然で、さらに連行中のパトカー車内や取調室へ行く廊下を含めて全件・全面可視化の実現、そして、弁護士立会いへ向けて動き出すべきである。証拠開示は、証拠リストまでは見られるようになったが、全部の証拠がみられないので、冤罪は防止のためには全面証拠開示が必要であるとした。

 裁判員裁判制度については、それがはじまったことによって裁判官は以前より中立の立場をとるようになったことは評価したいとした。しかし、裁判員という市民と自分たちはうまくやっていると勘違いしている裁判官がいる。それは思い上がりで、そこにくさび打ちたいと心情を吐露した。

 その後、3人全員と会場内の市民と意見交換が行われ、黙秘権の意味、当番弁護士制度や裁判員制度の成果、死刑問題などが話し合われた。
 この会はこれで終わりになるが、今後は、市民目線で広く司法制度を監視していくことを期待したい。(な)

 

京都・当番弁護士を支える市民の会の20周年記念集会。左から、石塚伸一、徳田靖之、山田悦子、遠山大輔各氏。2018年10月28日。京都弁護士会館にて。
京都・当番弁護士を支える市民の会の20周年記念集会。左から、石塚伸一、徳田靖之、山田悦子、遠山大輔各氏。2018年10月28日。京都弁護士会館にて。

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