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えん罪救済センター、2支援事件の無罪判決確定を受けて声明


 4月22日、えん罪救済センター (イノセンス・プロジェクト・ジャパン) は 、 同センターが支援していた2つの事件について無罪判決が確定したことで、「えん罪事件の速やかな救済とえん罪原因の検証システムの確立を求める声明——支援した2つの事件の無罪判決確定を受けて」を発表した。
 
 声明によると、一つは、「虐待による頭部外傷(Abusive Head Trauma=AHT」が問題になった事件である。大阪高裁第3刑事部は、2020年1月28日、女児(事件当時1歳11か月)の頭部に暴行を加えて死亡させたとして起訴され、一審で無罪判決を受けていた男性に対し、検察官の控訴を棄却して無罪を支持する判決を言い渡した。検察側は上告せず、無罪判決が確定した。同センターは一審段階から本件を支援していた。

 同センターは、AHTやその一類型である揺さぶられっこ症候群(SBS)について、諸外国で医学的観点から議論が行われていることに注目し、本件に関わり弁護していた。本件では、医学的証拠の背後にある理論の科学的根拠や証言のあり方が問題になり、この弁護活動は、その後、別のえん罪救済組織である「SBS 検証プロジェクト」の設立にもつながった。
 
 もう一つは、湖東記念病院事件である。2020年3月31 日に大津地裁は、再審公判で無罪判決を言い渡した。検察官は控訴を断念したため、無罪判決が確定した。本件では、元看護助手であった西山美香さんが、同病院の入院患者の人口呼吸器を故意に外したとして殺人罪で有罪が確定し、15年以上服役した。第2次再審請求でようやく開始決定がなされた。

 声明では、本件のえん罪原因として「警察の見込み捜査、供述弱者への配慮を欠いた不当な取調べによる虚偽の自白、自白に依存した裁判所の事実認定、不十分な証拠開示(証拠隠し)、不適切な科学的証拠など」を指摘する。そして、「再審請求段階で証拠開示の制度がないことや検察官による再審開始決定への抗告が認められていることによって、無罪判決までに非常に長い時間がかかり、司法による救済が遅延するという結果」になったと強く警告している。
 
 また、声明は、「謙虚に司法の過ちと向き合って、えん罪事件を真摯に検証し、その教訓を刑事司法制度や運用の改善につなげることの必要性」と、支援2事件についても、えん罪原因の公的調査が速やかに行われるべきだとしている。
 
 最後に、同声明は、「すべてのえん罪事件を多角的な視点から見直してえん罪の原因を明らかにし、その原因を除去するための制度改革を不断に積み重ねることは 、司法関係者だけでなく、全ての市民の責務です。私たち一人ひとりがえん罪事件に学び、改革を実現していかなければなりません」とむすんでいる。

 えん罪救済センターは、刑事事件のえん罪の被害者を支援し救済すること、そしてえん罪事件の再検証を通じて公正・公平な司法を実現することを目指して2016年に設立された民間の団体である。

(2020年05月02日公開) 


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