木谷明先生を偲ぶ会/大崎事件などの早期の救済と再審法改正に尽力した元裁判官・木谷明さん


2025年9月20日、法政大学外濠校舎にて(撮影:刑事弁護オアシス編集部)

 木谷明先生を偲ぶ会が、9月20日(土)午後1時30分より、東京・千代田区の法政大学外濠校舎で開催された。元同僚やゆかりの弁護士、研究者、市民ら約200人が参加した。同僚で元東京高裁裁判官の秋山規雄、弁護士の鴨志田祐美、法政大学名誉教授の福井厚各氏らが、お別れの挨拶をした。

 木谷さんは、昨年11月21日、亡くなった(86歳)。神奈川県平塚市出身。東大法学部在学中の1960年に司法試験に合格し(司法修習15期)、1963 年に東京地裁に判事補として任官(同僚には、袴田事件一審の熊本典道元裁判官がいた)。その後、名古屋、大阪、浦和各地裁の裁判官、水戸地裁所長、大阪、東京各高裁裁判官を歴任した。最高裁調査官も努めた。

 30件以上に及ぶ無罪判決は、木谷さんの刑事裁判に対する真摯な取組みを象徴している。そのすべてではないが、各種の判例データベースで収集したものを「木谷明元裁判官の無罪判決一覧」として収録する(一部民事判決を含む)。

 2000年に裁判所を退官後、法政大学法科大学院教授。同大学院退職後は、2012年弁護士登録(第二東京弁護士会)。弁護士として精力的に活動するとともに刑事司法のあり方について鋭い意見を発信し続けた。再審事件では、恵庭OL殺人事件、大崎事件の弁護団に参加するとともに、再審法改正をめざす市民の会の共同代表として再審法改正の実現のために活動した。

 挨拶した鴨志田弁護士は、木谷さんの大崎事件の再審弁護団での活動と再審法改正についての思いについて振り返った。

 「木谷さんは75歳のとき、志願して大崎事件の再審弁護団に入った。第2次再審の最高裁棄却決定で意気消沈していた弁護団のかたわら、決定文をしっかり読んで分析していただいた。また、木谷さんは袴田事件についての論文で、『当代一流とみらる』裁判長が何人も関与したが、再審決定まで60年近くの歳月がかかったと指摘しています(判例時報臨時増刊2023・10・25号)。裁判官は『どんな捜査官にも証拠捏造に走る動機はある』という前提にたって、疑問のある証拠については事実関係を詳細に調査し、厳密な判断が必要としています。そして、証拠捏造を徹底的に審理するためには、証拠開示命令権など裁判所の権限を再審法に盛り込むことが必須だとして、冤罪救済のための再審法改正を最後まで訴えていた」。

 最後に、鴨志田弁護士は、今年末には木谷さんに再審法改正の実現の報告ができるよう全力を上げたいと誓った。

【主な著作一覧】
『刑事裁判の心——事実認定適正化の方策』(新版、法律文化社、2004年)
『事実認定の適正化——続・刑事裁判の心』(初版、法律文化社、2005年)
『刑事事実認定の基本問題』(編著、初版、成文堂、2008年)
『刑事裁判のいのち』(法律文化社、2013年)
『「無罪」を見抜く——裁判官・木谷明の生き方』(岩波書店、2020年)
『違法捜査と冤罪 捜査官! その行為は違法です。』(日本評論社、初版2021年、第2版2024年)

 なお、季刊刑事弁護121号(2025年)には、水野智幸法政大学教授(元裁判官)による「木谷明さんを偲んで」が掲載されている。

(な)

(2025年10月04日公開)


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