
佐賀県警察本部刑事部科学捜査研究所(佐賀県警科捜研)の元技術職員のDNA型鑑定記録改ざんについて特別監察を行っていた警察庁は、2025年11月27日、その中間報告を公表した。これに対して、藤田義彦(藤田法科学研究所長・元大学教授)さんが、佐賀県弁護士会(会長:出口聡一郎)に提出した「意見書」が、このほど公表された。
特別監察は昨年10月8日から、同庁刑事局刑事企画課や科学警察研究所(科警研)の幹部ら28人体制で実施。特別監察の目的は、①DNA型鑑定の実施体制とその実施状況の確認、②不適切事案の原因分析とそれを踏まえた再発防止策の2点である。
確認作業は、佐賀県警が不適切とした130件をまず行い、その後、元職員が2017年6月以降、一人で担当した513件の鑑定についても確認するという方針の下で行われた。中間報告では、①については「捜査・公判への影響の有無」と元技術職員による「鑑定の実施状況」の2つの確認が進められていたが、前者について公表された。
それによると、現時点で、佐賀県警が不適切とした130件の「捜査・公判への影響の有無」については、「被疑者でない方を捜査対象にした」「拘束すべきでない方を、拘束した」「犯人でない方を、被疑者として検察庁に送致した」という捜査上の影響は確認されていないという。今後、玉木敬二京都大学名誉教授(法医学)、青木康博名古屋市立大学名誉教授(法医学)の外部有識者の意見を聞き、数か月後の最終報告を目指すとする。
この中間報告から見えてくる、警察庁の特別監察の中間報告内容と問題点について、藤田さんに聞いた。
「(中間報告は)全体的に『「本来、拘束すべきでない方を、拘束した」、「犯人でない方を、被疑者として検察庁に送致した」といった捜査への影響はないことが確認された』と結論づけているが、『本来、判明するはずの被疑者を判明させることができなかったか』といった捜査への支障・影響を検証する必要がある。さらに、客観性、正確性、中立性を担保する第三者委員会・機関による詳細な検証は必須である。
また、『1 体制 科学警察研究所生物第四研究室長、主任研究官、犯罪鑑識官付鑑定人等(17名)』としているが、犯罪鑑識官も含め、DNA型鑑定不正に至ったことに対して指導・監督に問題がなかったのか、自己の客観的な検証は実施できない。
特別監察において、対象職員(元技術職員)の上司等への聞き取りだけでは、不十分である。当然、対象職員についても聴取し、不正なDNA型鑑定を行った理由、科捜研での職場環境や待遇などの全容を解明しなければ、同様の事案が発生する可能性はある。本事案と同様の方法で行った約13年前の和歌山県警科捜研化学科研究員の不正鑑定に対して、私は論文『「法科学研究所」創設の提言──冤罪のない安全と安心の社会を目指して』(犯罪学雑誌第81巻第1号〔2015年〕3~15頁)で警鐘を鳴らしていたが、警察組織が真の科学捜査の在り方について真摯に取り組まなかったツケが今、回ってきている」。
(な)
(2026年01月16日公開)