
台湾法を学ぶ有志グループ「台湾法勉強会」が、台湾の刑事法制度を日本語で紹介するウェブサイトを2026年5月に公開した。東京大学や台湾大学など日台の大学出身者が執筆・翻訳・映像制作を分担し、台湾の刑事法や少年法に関連する事件や立法の動向などを継続的に発信している。
刑事法を中心に据えた発信
サイトは、その目的として「台湾法の架け橋として、台湾と日本をつなぐ勉強会」を掲げ、「台湾と日本は、野球、芸能、文化など、さまざまな分野で活発な交流を続けてきました。法律の分野においても、台湾の多くの法律は日本法の影響を受けながら発展してきたという歴史があります。本勉強会では、こうしたこれまでの多種多様な交流の経験を踏まえつつ、今回はその逆の視点から、台湾法を日本に紹介する」としている。現時点では刑事法制度を主軸に情報を発信する。
台湾の少年法制度や法律扶助制度は、日本の刑事弁護実務からは情報を得にくい分野である。今後は刑事法以外の分野にも対象を広げる方針で、日台の法律実務家をつなぐ場としてどこまで発展するかが焦点になる。
「台湾法ニュース」で最新動向を解説
サイトの主要コーナーの1つ「台湾法ニュース」では、台湾の刑事法・少年法をめぐる最新の立法動向や判例が随時取り上げられている。最近では、「台湾新北市中学校内生徒殺害事件の判決確定——少年法制度見直しの契機」を洪士軒さんが執筆し、少年による殺人事件の確定判決を機に台湾の少年法制度の見直し論議が高まっている経緯を紹介した。また、古德凱さんが、台湾司法院が立法院に提出した少年事件処理法の改正案について、前歴記録の抹消制度がどう見直されるのかを解説する記事を公開している。
直近の2026年7月16日には、林以涵さんが台湾の法律扶助制度を担う「財団法人法律扶助基金会」を取り上げ、朱芳君弁護士への取材を通じて「日本の法テラスによく似た組織」であり、重大な刑事事件で経済的に困難な被疑者・被告人を支える仕組みだと紹介した。
「台湾法ミニ講座」は動画で制度を解説
もう1つの柱である「台湾法ミニ講座」は、動画を組み合わせた記事形式で台湾の法制度を基礎から解説するコーナーだ。
すでに公開している「冤罪救済の最前線——台湾イノセンス・プロジェクト」では、2012 年に設立された台湾イノセンス・プロジェクトの活動を紹介する。同プロジェクトはこれまでに16名の冤罪を晴らしてきたが、その組織体制、無実の人々の支援の方法、今後の目標、そして台湾における冤罪問題について、法曹三者がどのような姿勢で臨んでいるのか、などを映像を通じて知ることができる。
このほかサイトでは、日本の法律実務家向けに台湾の施設参観への同行や翻訳・通訳、講演の手配といった実務交流サービスも展開しており、これまでに翻訳・通訳が35件以上、訪問・連絡調整が20件以上の実績があるという。
【編集部より】
刑事弁護オアシスでは、これに先立ち連載「ニュースレター台湾刑事法の動き」を掲載してきた。2020年3月の第1回「台湾刑訴法『再審編』2019年改正/再審段階の弁護士の役割、記録閲覧規定等の新設」を皮切りに、姦通罪の廃止(釈字第791号)、国民裁判官法の概要、司法IT化の現状、2024年9月の死刑制度の合憲性をめぐる憲判字第8号など、台湾刑事法の個別テーマをじっくりと掘り下げてきた。台湾の刑事司法を深く知りたい読者は、本サイトの連載記事もあわせてご覧いただきたい。
(2026年08月10日公開)