
毎年10月2日は、えん罪に対する問題意識を高めることを目的とした「世界えん罪の日」である。この「世界えん罪の日」は、2014年にイノセンス・ネットワーク(Innocence Network) によって創設され、世界各地で毎年アクションが行われている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)とイノセンス・プロジェクト・ジャパン(IPJ)による「ひとごとじゃないよ!人質司法」プロジェクトは、2023年から毎年10月2日に、人質司法の問題を広く社会に伝える意見広告を新聞に出している。
今年は、故・阪原弘さんの死後再審の開始が確定した「日野町事件」(1984年)を題材に、2026年10月2日(金)の中日新聞東海本社版・東京新聞・中日新聞滋賀版の各紙の朝刊に、「大切な家族のための自白」をテーマとした全面広告を掲載した。
広告に掲載された文言は以下の通りである。
「パパの願いは、
娘のしあわせです。
家でも、取調室でも。
大切な人を守るためなら、
人は『嘘の自白』をする。
多くのえん罪が、
こうしてつくられてきた。
『娘の嫁ぎ先をガタガタにしてやる』
これは犯人ではなく、警察の言葉だ。
酒店経営の女性が殺害された日野町事件。阪原弘さんは3日間、早朝から深夜におよぶ取り調べを受けた。そして、娘の結婚生活を脅かされたため、やっていない殺人を自白してしまった。阪原さんは23年間にわたり無実を訴え続けたが、服役中の2011年に75歳で亡くなった。今年2月、最高裁で『死後再審』の開始が確定。阪原さんは無罪となることが確実となった。
被疑者・被告人を長期間、拘束して嘘の自白を引き出す『人質司法』は、えん罪の原因として世界的に批判されています。どうかこの問題に関心を持ってください。そして、人質司法見直しへの世論を高めてください。
大切な人がいるすべての人にとって、えん罪は、ひとごとではないのですから。」
被疑者・被告人が罪を認めないと身体拘束が長引く「人質司法」問題。いつ終わるかわからない長期勾留から、嘘の自白が引き出され、冤罪を生む原因になっていると国内外で批判されている。
日野町事件の取調べも典型的な「人質司法」だった。3日間にわたる取調べで、阪原さんは否認を続けるも、「娘の嫁ぎ先をガタガタにしてやる」など家族を脅しの材料にされ、ついに虚偽の殺人の自白をしてしまった。その結果、無期懲役判決を受け、無実を訴えながら2011年に獄中で亡くなった。
阪原弘さんの死後、長男の阪原弘次さんが請求人となって第2次再審請求を申し立て、今年2月に再審開始決定が確定した。現在、再審公判に向けて、裁判所、検察、弁護団の三者協議が大津地裁で進行中である。
無実の罪を認めるまで拘束され、家族の人生まで「人質」に取られたとき、あなたは「やっていない」と訴え続けることができるだろうか。
人質司法から身を守る方法は、日本の人々が関心を持つこと、そして、人質司法見直しへの世論を高めることである。
同プロジェクトは、これまでに3回意見広告を掲載している。第1回(2023年)は「真実は曲げられる」、第2回(2024年)は「『正義』は暴走する」、第3回(2025年)は「この国では、えん罪も成果になる」をテーマに作成された。第4回目のデザインは、過去3回に続いて、株式会社電通のコピーライター橋口幸生さんと、同アートディレクターの岩下智さんが、ボランティアで作成した。
(2026年10月02日公開)