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『刑法の時間』


 「嗚呼、きた! きた! きた!」というのが、この薄い、コンパクトな本書を一読後の私の率直な感想である。専門書といえば大概重々しく専門用語が多く堅苦しいというのが定番であり、入門書となると、読者の理解などそっちのけで、知識の羅列に終始するか、大まかなポイントだけを紹介して「あとは専門書でカバーしろ!」的なものが大半である。

 そんな中で、本書は、法律の中でも厳格さを要求される刑法の入門書でありながら、ここまでの項目数を、平易な事例設定や言葉遣いで仕上げているではないか! 第1~2話で刑法が人権保障にとっていかに重要であるか、そのための全体像はどうなっているのかを分かり易く提示し、第3~10話で犯罪(とされる)成立要件を、第12、13話で2人以上が加担した場合の共犯論について、次いで第2編では全15話で何と27以上(私の数え間違いがなければ)の罪の特徴について解説を加えている。何と欲張りな内容か!

 これだけの論点を消化するには、著者たちの綿密な(?)作戦があったからであろうが、とにかく本書は、流れが好い。例えば、第1~3話では罪刑法定主義から犯罪成立要件の一番手「構成要件」要素へと軽妙に話を進めるが、責任主義、謙抑主義の説明がない! ないのに「危険犯」という概念はサラリと述べて違和感をもたせない。また、正当防衛(第8話)があるのに、その他の違法性阻却事由の言及はない! ないのに先に読み進めても問題がないのである。こうした項目は他の文中やコラムの中に上手くこれらを埋め込んで済ませる、何と大胆不敵なことか! もう「きた! きた! きた!」しかない!

(ま)

(2021年04月27日公開) 


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