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日本プロボクシング協会が「袴田事件」をマンガで紹介 毎月1回公開、HPでスタート


スプリットディシジョン
マンガの制作発表に臨む(左から)執筆者の森重水さん、袴田巖さんの姉・袴田秀子さん、プロボクシング協会の新田渉世さん(撮影:小石勝朗)

 日本プロボクシング協会は長年、袴田事件(1966年)で死刑が確定しながら冤罪を訴え続ける元プロボクサー・袴田巖さん(82歳)の支援活動に取り組んできた。事件のことをより多くの人に知ってほしいと、捜査と裁判の経緯や問題点をマンガで紹介することを決め、2月から袴田巖支援委員会のホームページ(http://jpbox.jp/hakamada2.html)で発信を始めた。

 マンガのタイトルは「スプリット・デシジョン~袴田巖 無実の元プロボクサー」。スプリット・デシジョンとは、ボクシングの試合で3人の審判の判定が2対1に割れること。袴田事件の一審判決(1968年)を起案したとされる元裁判官の熊本典道さんが「私は無罪を主張したが2対1で死刑に決まった」と2007年に告白していることから、多数決で下された理不尽な判決に対する批判の思いを込めたという。

 全6回の予定で、7月まで毎月15日に公開する。2月15日の第1話では、一家4人の殺害事件が発生し、袴田さんが警察に目をつけられて逮捕され、過酷な取調べで犯行を「自白」させられるまでを描いている。1回あたりA4判相当で8ページとコンパクトで、連載終了後は小冊子にしたり外国語版を作ったりすることも想定している。

 マンガの作者は、森重水(しげみ)さん(30歳)。袴田事件が起きた静岡県清水市(現在は静岡市清水区)で小学4年から25歳まで暮らした。市内の大学を卒業後、地元企業で働きながらボクシングジムに通ってプロライセンスを取得し、3戦1分2敗の戦績を残している。事件のことはニュースなどで見聞きする機会が多く、同協会は「『ボクシング』『清水』と袴田さんとの接点があり、強い思いを持って描いてくれそう」として執筆を依頼した。

 森さんは、再審請求審で開示された袴田さんの取調べの音声を聞いたり資料に当たったりしながら、ストーリーや絵の構想を練っているという。制作発表会見では「捜査の杜撰さや袴田さんの人生の歩みを、少しでも分かりやすく描きたい。袴田さんを支援する側の意見の押し付けにならないよう心がけながら『事実』を伝えたい」と語った。

 袴田さんは1980年に最高裁で死刑が確定した。2014年に静岡地裁が再審開始決定を出して逮捕から47年7カ月ぶりに釈放されたが、2018年6月に東京高裁が再審開始を取り消し、審理は最高裁で続いている。

 ボクサーとしての最高位は日本フェザー級6位で、1960年には年間19試合に臨み最多試合記録となった。日本プロボクシング協会は2007年に袴田巖支援委員会を発足させ、東京・後楽園ホールでチャリティーイベントを開いたり、最高裁や法務省へ要請書を提出したり、メッセージ動画を制作したりと、現・元の世界チャンピオンも参加して多彩な活動を展開してきた。

 同協会事務局長で、袴田巖支援委員長の新田渉世(しょうせい)さん(元東洋太平洋チャンピオン)は「高裁で再審開始決定が覆され、このまま黙っていると袴田さんが再収監されるおそれもある。ボクシング界の発信力を生かし、事件について子どもにも分かるような形で伝えていきたい」とマンガ制作の動機を話している。

(ライター・小石勝朗)


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