再審法改正・法制審/証拠の「目的外使用」禁止案にジャーナリストら懸念の声


再審請求審は現状以上にブラックボックスと化してしまう——記者会見する「司法情報公開研究会」代表でジャーナリストの江川紹子さん(右)ら(2025年12月12日、東京都内。写真提供:共同通信社)

 12月16日に開かれた法制審議会―刑事法(再審関係)部会の第13回会議で、同部会事務局が「今後の議論のための検討資料」を提出した。問題の多い検討資料であるが、その中で再審請求審で開示された証拠の目的外使用を禁止する案が盛り込まれている(検討資料については、日弁連・再審法改正実現本部による記者に対する説明の概要が詳しい)。ジャーナリストや冤罪支援者らから、裁判資料へのアクセスができなくなり、再審請求審の検証や冤罪支援が阻害されると懸念の声が高まっている。
 
 同検討資料は、再審請求審において検察官が開示した証拠を、再審請求人が再審手続等以外で人に交付、提示、提供した場合、「1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」の罰則を定めて禁止する。弁護人または弁護人であった者についても、利益を得る目的の場合に限り同様に定める。

 通常審の検察官開示証拠について、当該事件の裁判手続等以外の目的外使用の禁止を定める刑事訴訟法(第281条の4、5)は、2004年の改正で規定された。同規定ついては、改正当時から弁護士らから疑問の意見があるが(『ハンドブック刑事弁護』304頁以下)、これを再審請求審においても導入するものである。

 この規定の導入は、公開の法廷で行われる通常審の場合以上に、非公開で行われる再審請求審の場合においてより弊害を大きくするものである。冤罪は究極の人権侵害であるにもかかわらず、市民は報道や集会等で内容を知ることができず、再審請求審は現状以上にブラックボックスと化してしまう。また、開示証拠が冤罪支援者らと共有できなくなると、弁護人が一般市民の視点から新たな気づきを得るという機会も奪われる。

 これより先、12月12日、再審請求手続にも証拠の目的外使用禁止の条項が盛り込まれるのではないかと危惧していたジャーナリストの江川紹子氏ほか弁護士や研究者らの「司法情報公開研究会」が、法制審議会に対して「再審請求手続きにおいて開示された証拠の『目的外使用』禁止条項を設けないよう求める申し入れ」を提出し、記者会見を開いた。

 同申入れは、再審請求手続における証拠の目的外使用について、「手続きの不透明性という問題はより深刻となり、制度の改悪に他ならない」と厳しく批判し、「『名誉・プライバシー』を名目に、再審請求審という人権上極めて重要な手続きを市民の目が届かないようにしようとしているのではないか、との疑いすら禁じ得ない」と懸念を表明する。

 また、「目的外使用禁止という、市民の知る権利と表現の自由を揺るがす問題で影響を受ける主体は、学術調査・社会調査・報道のそれぞれの関係者をはじめ公共的議論の担い手多数に及ぶ」として、目的外使用禁止の是非についての審議にあたっては、公共的議論、報道に関する関係者、有識者の意見を尊重するよう求めている。

(2025年12月23日公開)


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