全司法労働組合 少年法対策委員会 小冊子/『家裁調査官の少年事件事例集 18・19歳の事件簿』発行


 現在、法制審議会少年法・刑事法部会で、少年法適用年齢の引下げに関する議論が進んでいる。引き下げられた場合影響を受けるのが18・19歳の少年であることは言うまでもない。新聞・テレビなどマスメディアでは、少年事件を扱う家裁の仕事や当事者の声はあまり報道されないため、議論の前提となる18・19歳の少年事件の実態を知ることは困難である。

 この程、全司法労働組合(全司法)の少年法対策委員会が刊行した『家裁調査官の少年事件事例集 18・19歳の事件簿』は、それを知る絶好の小冊子である。

 家裁は捜査機関から送致されてきた少年に対する処分を決める。その処分を決めるためには、少年の資質、生育歴、生活環境などを調査し、非行の動機、再非行の危険性を解明しなければならない。その仕事を担っているのが家裁調査官である。

 この小冊子では、全司法に属する家裁調査官が6ケース──ぐ犯(覚せい剤使用・所持)、万引き、過失運転致傷、児童ポルノ禁止法違反、家庭内暴力(傷害・器物損壊)、特殊詐欺──について紹介している。

 それぞれのケースの概要と少年の処遇を紹介したあと、「このCASEのポイント」で同種事件の社会的背景なども分析し、18・19歳の少年事件の実態の理解を一層助ける。最後に「もし、少年法適用年齢が引き下げられたら……」という見出しのコメントがあり、現在の処遇と改正後のそれが比較できることで、この小冊子の価値が一層高まったといえる。

 それぞれのケースによってこんなにも少年に対する処遇が変わってくることを、私たちははじめて知ることになる。A4判で20頁足らずの小冊子であるが、まさに「生きている少年法」がここにある。

 なお、全司法労働組合は、全国の裁判所職員で組織される労働組合である。1947年1月25日に結成され、職員の地位向上、労働条件の維持・改善と「国民のための裁判所」を作ることを目的に活動している。2019年7月、「少年法の適用年齢引下げに反対する決議」を発表している。

■小冊子の入手方法:下記の住所に、お名前・送付先・電話番号・メールアドレスを明記の上、封書にて切手210円(小冊子送料分)をお送りください。先着100名様にお送りいたします。なお、お一人1冊とさせてください。

〒160-0004
東京都新宿区四谷2−10 八つ橋ビル7階 現代人文社気付
刑事弁護オアシス事務局

(2020年08月13日公開)


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