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「袴田事件を知って」とプロボクシング協会がクラウドファンディング/リターンは限定品のパーカーやTシャツ

小石勝朗 ライター


リターンのTシャツを着て協力を呼びかける元世界王者の内山高志さん(日本プロボクシング協会提供)

 袴田事件のことを広く知ってほしいと、日本プロボクシング協会(JPBA)の袴田巖支援委員会がクラウドファンディングを実施している。ボクシング界の人気ファッションブランド「rsc products」と提携し、リターン(お返し)に限定品のパーカーやTシャツ、キャップを用意した。12月14日にタイトル防衛を果たした井上尚弥選手ら現・元の世界王者も応援し、協力を呼びかけている。

「ボクサーくずれ」の偏見を打ち破れ

 袴田事件は、1966年6月に静岡県清水市(現・静岡市清水区)で起きた味噌会社の専務一家4人殺害事件だ。この会社の住み込み従業員だった元プロボクサー袴田巖さん(85歳)が強盗殺人罪などで逮捕・起訴され、一貫して犯行を否認したものの1980年に最高裁で死刑が確定した。2014年に静岡地裁が再審開始と死刑・拘置の執行停止を決定し、袴田さんは47年7カ月ぶりに釈放されたが、その後、東京高裁が逆転の請求棄却決定〜最高裁が高裁決定を取り消して審理を差戻し、という波乱の展開をたどり、いまだ再審は実現していない。

 袴田さんの最高位は日本フェザー級6位。1960年には年間19試合ものリングに立ったタフなファイターだったが、事件当時、体を壊して引退していた。犯人と疑われた一因に「ボクサーくずれ」の偏見があったとされ、ボクシング界は無実を訴え再審を求める袴田さんの支援を続けてきた。JPBAの袴田巖支援委員会は2007年にそれまでの体制を再構築する形で発足し、事件をテーマにしたマンガを制作したり、チャリティーイベントを開催したり、裁判所や法務省へ要請をしたりと、精力的に多彩な活動を繰り広げてきた。

井上尚弥選手ら現・元世界王者も応援

 今回の企画は、手が届きかけた「再審無罪」がなかなか成就せずに焦りも募る中で「少しでも多くの方に『現実』を届け、袴田巖さんの“戦い”を伝えたい」と考案した。タイトルは「死刑囚、袴田巖の無罪を勝ち取れ」。サイトでは応援団として、現役世界王者の井上尚弥選手、中谷潤人選手、元世界王者の田中恒成選手、岩佐亮佑選手、井上拓真選手、内山高志さん、八重樫東さんが名を連ねている。

集会でクラウドファンディングをPRする袴田巖支援委員会のメンバー=2021年12月10日、東京・永田町の憲政記念館、撮影/小石勝朗

 クラウドファンディングは2021年12月1日に始めており、2022年1月10日まで。目標金額は10万円だったが、すでに達成しており、それを超える金額については諸経費を除いて袴田巖支援委員会へ寄贈される。同委は、袴田さんを支援するためのイベント開催や新たな企画の経費などに充てる意向だ。

 注目を集めるためリターンに知恵を絞り、ボクシング界の人気ブランド「rsc products」と提携してパーカーとTシャツ、キャップを特注した。寄付金額が1万円でパーカー(黒、グレー)▽5000円でTシャツ(黒、ベージュ、グレー、白)、または、キャップ(黒)▽1000円でポストカードを贈る。パーカーとTシャツのサイズはS、M、L、XLの4つ、キャップはフリーサイズ。いずれも今回の企画限りの数量限定品で、市販の予定はないレアものだ。

 支援委員会は「デザイン性を重視し、街でも着用できるカッコ良いものになりました」と出来栄えに自信を見せる。「1人でも多くの方に着てもらいたい」と望んでおり、このパーカーやTシャツを着て出歩くことで、事件について社会へさらに広くアピールする効果を期待している。

 同委員会の新田渉世・委員長は「1人でも多くの方に袴田巖さんが今も真の自由を求めて戦っていることを知っていただき、1日でも早い再審開始と無罪獲得が実現するよう、ご協力をお願いします」とコメントしている。

 クラウドファンディングのサイトは、https://readyfor.jp/projects/78163

◎著者プロフィール
小石勝朗(こいし・かつろう) 
 朝日新聞などの記者として24年間、各地で勤務した後、2011年からフリーライター。冤罪、憲法、原発、地域発電、子育て支援、地方自治などの社会問題を中心に幅広く取材し、雑誌やウェブに執筆している 。主な著作に『袴田事件 これでも死刑なのか』(現代人文社、2018年)、『地域エネルギー発電所──事業化の最前線』(共著、現代人文社、2013年)などがある。

(2021年12月21日公開) 


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