8月11日、「第3回夏のオンライン高校生文学模擬裁判交流大会」がZoomで開催。傍聴受付は、8月10日まで!


 8月11日(金・祝)に、「第3回夏のオンライン高校生文学模擬裁判交流大会」が、龍谷大学札埜研究室とオンライン高校生文学模擬裁判交流大会実行委員会の主催で、Zoomで開催される。

 現在、この模擬裁判の傍聴人(観覧者)を募集している(傍聴無料・要事前申込み)。観覧の申込み締切りは、8月10日(木)正午まで。

 今回の模擬裁判でとりあげるテーマは、現代版近松「坂田山心中未遂事件」である。文学を題材にした模擬裁判に高校生が挑戦する。

 主催者の札埜和男准教授(龍谷大学文学部)は、今回の高校生文学模擬裁判交流大会の開催趣旨と特色について、つぎのように語る。

 「文学作品に関連した教材を作成し法的知識や法的思考力を手段として、人間や社会への眼差しを深める文学模擬裁判を広めたいという思いから実施しています。今回初参加の学校もあり嬉しく思います。
 今回の特色は作り方です。これまでは文学作品を題材に教材を作成しましたが、今回は実際の事件(1991年に夫婦間で起きた殺人事件)、それを模擬裁判化した書籍(奥野善彦編『安楽死事件』〔医学書院、1994年〕)を参考に教材を作成し文学的色彩を加えました。
 それは近松門左衛門『曾根崎心中』や渡辺淳一の小説であったり、1932年に起きた坂田山心中事件に関わる歌謡曲や映画です。文学者の情死事件(有島武郎と波多野秋子の心中事件、島村抱月や松井須磨子の後追い心中)の話題も加えました。芸能人の心中未遂事件が世間を騒がせていますが、事件前から構想していましたので重なったのは偶々です。小林恭二『心中への招待状──華麗なる恋愛死の世界 』(文春新書、2005年)によると、心中とは本来「恋愛死」であり、厳密には家族間での心中は該当しないということです。
 高校生が心中する大人の男女の心情を察するのは困難でしょうが、文学は理解しがたい事象を解く『梯子』となります。心中をテーマに人間とは何かを考える機会にしてもらえたらと思います。舞台とした鎌倉や大磯などの湘南は何度も訪れている地であり、坂田山心中事件は亡くなった男性と級友であったという、母校の大先輩から伺ったことがあります。そんな自身のプライベート上の『遭遇』も教材を創る種となっています」

○テーマ:現代版近松「坂田山心中未遂事件」

○日時:2023年8月11日(金・祝) 9:00〜17:30(終了見込)

○場所(法廷):札埜研究室のZoom(1法廷で実施)および各自宅、学校(ZOOM)

◯参加費:無料 *事前登録制

◯申込み方法:申込みはこちらから。締切は8月10日(木)正午まで。

○出場校(6校) 
 ・札幌龍谷学園高等学校(北海道) 
 ・京都女子高等学校(京都府)
 ・神戸女学院高等学部(兵庫県)
 ・神戸海星女子学院高等学校(兵庫県)
 ・済美平成中等教育学校(愛媛県)
 ・上智福岡高等学校(福岡県)

○競技方法:参加校は予め配布される文学教材シナリオや関連資料をもとに、参加校が検察側・弁護側どちらかの立場に立って立証・弁護活動を行う。シナリオ創造型の模擬裁判である。参加校は決められた時間に従い、立証・弁護活動を行い、審査員がそれらの内容を評価して、その総合点で勝敗を決める。得点の高い順から優勝校・準優勝校を決める。

○採点基準:読解力、人間や社会への洞察力、論理性、表現力等の視点から採点する。

○各チーム人員:1試合に必要な生徒数は、検察側・弁護側いずれの立場でも最低3名とする(証人役、被告人役は生徒が行う。検察官役、弁護人役の生徒は証人役あるいは被告人役を兼ねることはできない)。

○当日のスケジュール予定:
 9:00 Zoom入室可能 
 9:15 諸注意等の説明 
 9:30〜11:30 【第1試合】(検察)済美平成 VS(弁護)神戸海星
  (休憩45分)
 12:15〜14:15【第2試合】(検察)札幌龍谷VS(弁護)上智福岡
  (休憩25分)
 14:40〜16:40【第3試合】(検察)神戸女学院VS(弁護)京都女子
 17:00頃 講評/成績発表・表彰式
 17:30  終了(予定)
  ※試合状況により、時間変更の可能性あり。

○シナリオ紹介:現代版近松「坂田山心中未遂事件」(あらすじ)
 令和5年5月8日午後8時頃、神奈川県中郡大磯町のホテル坂田山において、夫が内縁の妻をベルトで首を絞めて殺害するという事件が起こった。
 妻はガンに冒され余命幾許もなかった。自分の命が短いことをわかっていた妻は、夫に以前から「殺してほしい」と漏らしていた。
 殺害された日はホテルで泥酔し、夫に「殺してくれ」と迫ったのである。
 妻を苦しみから救ってやりたいという思いから、夫は殺すことを託されたと判断し、妻の首を絞め、それでも殺せないとわかって自分のベルトで締めあげ、殺害に至った。
 罪の重みにたえかねた夫はそれから後を追って自分も死のうと試みたが死に切れず、警察に自ら電話して殺したことを告げ逮捕された。
 その後の調べで、確かに夫は妻を愛していたが、民間療法の高額な治療費で生活はかなり圧迫され苦しい状態であったことが明らかになった。
 また消費者金融や以前在職していた会社に借金があり、ギャンブルもしていたことがわかった。そこで警察は取調べの結果、嘱託殺人ではなく保険金を狙った「殺人」にあたると判断した。
 こうして、この事件は検察官から横浜地方裁判所小田原支部に起訴状が提出され、公訴が提起された。
 検察官は「殺人罪」を主張し、弁護人は妻を殺したことには間違いがないとしつつも、嘱託があったとして「嘱託殺人罪」を主張した。

[主な参考文献]
・朝日新聞縮刷版1991年3月10日付「病気の妻を絞殺と自首 藤沢で男性逮捕」
・朝日新聞縮刷版1991年5月9日付「『末期がんの妻を殺した』宇都宮会社員自首」
・奥野善彦編『安楽死事件──模擬裁判を通してターミナルケアのあり方を問う』(医学書院、1994年)
・邦光史郎『情死の歴史──陰の日本史』(廣済堂出版、1989年)
・小林恭二『心中への招待状──華麗なる恋愛死の世界』(文春新書、2005年)
・佐藤清彦『にっぽん心中考』(文春文庫、2001年)
・近松門左衛門『曾根崎心中』
・松平進編『新注絵入 曾根崎心中』(和泉書院、1998年)

○問い合わせ先:
 〒600-8268 京都市下京区七条通大宮東入大工町125−1
        龍谷大学大宮キャンパス西黌129号室札埜研究室 宛 
 TEL:075-343-3326(研究室直通)
 E-mail: fudafuda@let.ryukoku.ac.jp

○主催:龍谷大学札埜研究室・オンライン高校生文学模擬裁判交流大会実行委員会

○後援:龍谷大学犯罪学研究センター一般社団法人刑事司法未来、京都教育大学附属高等学校模擬裁判同窓会、龍谷大学矯正・保護総合センター、龍谷大学法情報研究会、刑事弁護オアシス

(2023年07月31日公開)


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