佐賀県弁護士会、9月9日、佐賀県警科捜研技術職員によるDNA型鑑定不正行為で声明 第三者機関による調査を求る


佐賀県警本部(2025年9月8日、写真提供:共同通信社)

 2025年9月8日、佐賀県警察(佐賀県警)は記者会見において、同県警の科学捜査研究所(科捜研)に所属する40代の技術職員が、2017年6月から2024年10月までのおよそ7年間にわたりDNA型鑑定で虚偽報告など不正行為を繰り返していたことを公表した。警察によると、不正行為は130件確認された。この中には、殺人未遂事件、薬物事件、ストーカー事件などの捜査の証拠として使用されたものも含まれていた。警察は、13件の不適切な対応については、虚偽有印公文書作成や証拠隠滅などの嫌疑で検察庁に書類送検し、この職員を8日付けで懲戒免職にした。

 130件のうち証拠として検察庁に送られたのは、殺人未遂や不同意わいせつなどの事件に関する16件であったが、佐賀地検は捜査や公判に影響したものはなかったと発表した。

 この不正行為に対して、佐賀県弁護士会(会長:出口聡一郎)は、9月9日、「佐賀県警科捜研技術職員によるDNA型鑑定での不正行為に対し最大限の非難をするとともに、不正行為の詳細と調査結果を開示し、第三者による調査を求める」とする会長声明を公表した。

 それによると、「科学鑑定は捜査の基礎となる情報であり、その内容や結果が信頼されるのは高度の専門性と中立性に担保されるものであるが、本件不正行為はかかる科学鑑定に対する信頼を根幹から揺るがすものであって、前代未聞かつ極めて重大な不祥事である。本件不正行為は、確認された130件のみならず、佐賀県警科捜研が行った科学鑑定すべてに対する信頼を失墜させ、刑事司法における適正手続や真実発見を害する行為である」と断じる。

 また、佐賀県警がこの不正行為すべてについて捜査・公判への影響はなかったと説明している点については、「捜査機関内部のみで実施された調査結果に到底信を措くことなどできない。各事件の元被疑者・被告人やその弁護人であった者に対する調査はいっさいなされておらず、元被疑者・被告人及びその弁護人であった者のほか、被害者等の関係者への説明や謝罪もなされていない。このように内部調査のみによって問題が無かったと結論付けたことは、本件不正行為の重大性を見誤っているほか、佐賀県警の組織全体の適正手続遵守の意識の低さが如実に表れており、刑事司法軽視も甚だしいといわざるを得ず、極めて遺憾である」と非難する。

 そして、この不正行為は職員個人の問題ではなく、佐賀県警の組織的な問題であるとして、佐賀県警に対して、130件すべてについて事件の元被疑者・被告人や被害者等の関係者に説明・謝罪を尽くすとともに、本件不正行為を防止できなかった原因の究明と徹底した再発防止策の策定・実施のため、事案の詳細と再鑑定結果を含む調査結果の公表と、第三者機関による調査の実施を強く求めている。

 冤罪の原因究明と防止対策措置と同様に、第三者機関による原因究明は必須であろう。

 また、佐賀地方検察庁に対しても、この不正行為を見抜けなかったことに対する原因究明、送致されていた虚偽証拠16件について、その詳細を明らかにするとともに、この不正行為に関係する鑑定結果が捜査・公判に影響を与えなかったと判断した理由の公表、元被疑者・被告人・弁護人や被害者等の関係者への情報の提供と説明を求めている。

 最後に、警察庁、検察庁、法務省および各都道府県警察に対して、同様の事態が発生しないように十分な施策および科学鑑定に使用した鑑定試料の保存義務を課すなど事後的な検証のための施策を講じることを強く求めている。

(2025年09月12日公開)


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