
再審法改正について、超党派議連(「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」)による議員立法が6月に衆議院に提案されているが、臨時国会でいまだ審議がはじまっていない。そればかりでなく、議連の動きを牽制するかのように、法制審議会―刑事法(再審関係)部会で再審法改正についての審議が4月からはじまり、急ピッチで進んでいる。その審議内容は、再審法改正の目的である早期の冤罪救済をないがしろにする後ろ向きの姿勢が強まっている。
そうした法制審議会の審議内容に危機感をもった刑事法研究者4人が12月2日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いて、「再審法の改正に関する意見」を公表した。研究者は、葛野尋之・青山学院大学教授、田淵浩二・九州大学教授、中川孝博・國學院大學教授、水谷規男・大阪大学教授である。
これより先に記者会見を開き「再審法改正議論の在り方に関する刑事法研究者の声明」を発表したグループとは別である。
葛野教授は、「声明とは記者会見の日が偶然重なった。4人は声明にも賛同しているし、方向性は一緒である。声明は最大公約数をまとめたもので、意見書は再審制度について共同研究してきた成果をまとめたもの」と前置きして、記者会見に臨んだ。
「審議会では、多くの委員が法的安定性や通常審との整合性を強調されているが、それは虚構の上にある誤った安定性を維持することにつながる。袴田事件などで浮き彫りになった証拠開示制度の不備や検察官の不服申立てによる救済の遅れなど再審法の構造的問題を残存させるもので、司法の健全性を損なう。そうした議論は、現状の再審をさらに後退させるだけだ」と、葛野教授は法制審議会の議論を痛烈に批判した。
意見書は冒頭で、「議連法案が提出され、再審部会の審議が進められているいま、再審制度とその運用について研究を続けてきた者の視点から、再審部会における議論の問題点を指摘し、議論の在り方とともに、とくに重要な論点について改正が進むべき方向を示す」ものであると基本姿勢を示す。
そして、以下の4項目にわたって、法制審議会の議論内容を批判し、あるべき再審法改正の道筋を理論的に検討する。①再審法の改正を検討するにあたっての基本姿勢、②再審のための証拠開示の在り方、③明白性の判断方法に関する判例の援用方法、④再審開始決定に対する検察官の不服申立て。
会見では、①について葛野教授、②について田淵教授、③について中川教授、④について水谷教授がそれぞれ意見書の内容を補足した。
4人は、すでに、本サイトで「再審法改正が実りあるものになるように——再審制度を機能強化するための3つの課題」と題して連載を行っている。
(2025年12月05日公開)