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国連への申立ての活用と国内調査を要望 「ニッポンの身体拘束」についての日弁連シンポジウム


シンポジウム/ニッポンの身体拘束
シンポジウム/ニッポンの身体拘束——それ、恣意的拘禁ではありませんか? 左から、司会の姜文江弁護士、パネリストの池原毅和弁護士、長沼正敏弁護士、山城博治氏、ホン・ソンピル氏、海渡雄一弁護士(2019年6月4日、東京・霞が関の弁護士会館17階)。

 6月4日、日弁連主催で、国連人権理事会「国連の恣意的拘禁に関する作業部会」(Working Group on Arbitrary Detention=WGAD)に関するシンポジウムが、東京・霞が関の弁護士会館であった。

 時事通信の報道によると、5月26日、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン氏の家族の弁護士は、ゴーン氏が「司法による迫害」を受けているとして、上記「国連の恣意的拘禁に関する作業部会」に救済を申立てたことを明らかにしたという。

 まさに、このシンポジウムでは、いまだ一般には知られていないWGADへ恣意的拘禁の申立てを浮き彫りにすることとその活用がテーマであった。

 シンポジウムのはじめに、戸塚悦朗弁護士が、WGADへの人権救済の申立てと従来からある条約上の個人通報制度との相違点、その利点を解説した。このあと国連の恣意的拘禁に関する作業部会委員・元部会長のホン・ソンピル氏が、WGADの沿革、活動状況などについて基調報告した。

 つぎに、日本の拘禁の実態について、精神科病院における強制入院(姜文江弁護士、内田章弁護士)、刑事手続における勾留(星野英一元琉球大学教授、金高望弁護士)、刑事施設関係(海渡雄一弁護士)、入管収容関係(児玉晃一弁護士)の4つの分野について報告があった(丸カッコ内は報告者)。

 その後、姜文江弁護士の司会で、ホン・ソンピル委員、山城博治(沖縄平和運動センター議長)、池原毅和弁護士、海渡雄一弁護士、児玉晃一弁護士、長沼正敏弁護士が、WGAD制度を国内でどう活用していくかを話し合った。

 最後に、2020年に向かって、WGADへの個々の人権救済の申立てを活発化するとともに、WGADによる日本国内の恣意的拘禁に関する実態調査をするよう働き掛けることを確認した。

 WGAD は、1991年3月の国連人権委員会の決議に基づいて創設され、国連経済社会理事会によって、同年5月31日に承認・設立された。その後2006年に人権委員会が廃止され人権理事会が創設されたが、人権理事会の下で引き続き活動を行っている。

 個人が国連に人権侵害を訴える手段としては、各人権条約の個人通報制度があるが、これはそれぞれの選択議定書を批准していないと利用できず、日本はまだどの条約についてもこれを批准していない。しかし、拘禁に関するWGADの手続ではその必要がない。さらに最大の特徴は、「国内救済を尽くしている」(最高裁判所判決まで国内裁判手続を済ませている)ことが申立て要件であるが、それも必要ないことである。

 現在までに、この申立て事例は国内では数件しかないが、2018年8月WGAD は、山城さんに対する公務執行妨害罪・傷害罪による逮捕後150日にも及ぶ拘禁に関する申立てについて審議し、日本政府に対して意見(Opinion)を採択している。WGADは、山城さんに対する拘禁は、平和活動家としての表現の自由や集会の自由の権利行使の結果としてなされたものであり、また、政治的な視点からなされた市民活動家に対する差別的なものであり、恣意的な拘禁であったと意見を述べた。そして、山城さんに対する恣意的な自由の剥奪に関して独立機関による徹底調査、および同氏に対する人権侵害に関係する責任者の適切な措置を日本政府に求めている。しかし、日本政府はこれに対していまだ対応していない。


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