「死刑をなくそう市民会議」が設立集会/日弁連とも連携、世論や国会へアピール


設立集会
約350人が参加した設立集会=東京・明治大学(撮影/小石勝朗)

 死刑廃止を訴える市民団体や法曹関係者らが中心になって「死刑をなくそう市民会議」を結成し、8月31日に東京都内で設立集会を開いた。「2020年までの死刑廃止」を宣言した日本弁護士連合会(日弁連)とも連携し、世論や国会へのアピールを強める方針だ。来年に東京五輪を控え、「国際社会に対しあるべき社会の姿を示す」と決意を表明している。

 市民会議の共同代表世話人は8人。交通事故で小学生の息子を亡くした片山徒有・被害者と司法を考える会代表、元法務大臣の平岡秀夫弁護士のほか、日本国民救援会やアムネスティ・インターナショナル日本の幹部、刑法学者、宗教家らが名を連ねる。これとは別に、文化人や冤罪被害者、宗教家、学者、弁護士、元国会議員ら多彩な顔触れが呼びかけ人になっている。

平岡秀夫・元法相
共同代表世話人としてあいさつする平岡秀夫・元法相

菊地裕太郎・日弁連会長
菊地裕太郎・日弁連会長
中本和洋・前日弁連会長
中本和洋・前日弁連会長(いずれも撮影/小石勝朗)
 設立集会で平岡氏は、法相だった当時を振り返り、死刑の執行を上申されたものの「もしEUの国なら(死刑で)命を失われることはない。国民的議論が必要だ」と考え執行命令を出せなかった、と明かした。「死刑は廃止しなければならないし、必ず廃止されると確信している」と力を込め、市民会議が「積極的に情報や議論の場を提供したい」と抱負を語った。

 日弁連の菊地裕太郎会長も登壇。「死刑廃止への道のりは厳しいが、輪は確実に広がっている」との認識を示し、「連携して死刑廃止のうねりをつくりたい」とエールを送った。

 続いて、2020年までの死刑廃止をうたった日弁連の「福井宣言」(2016年)を主導した中本和洋・前会長が「私と死刑問題」と題して講演。絞首刑の残虐さや誤判・冤罪の危険、人は変わり得ることなどを考えて、死刑廃止に取り組む意思を固めた経緯を説明した。そして、今後の見通しとして「代替刑の導入などによって、世論調査で『死刑もやむを得ない』と答えている8割の人のうち半分の理解は得られる」と語った。

 シンポジウムや講談、鼎談もあり、盛りだくさんの設立集会になった。約350人が参加した。

 市民会議の設立趣意書は「継続して死刑執行をしている国は、190カ国を超える国連加盟国のうち十数カ国に過ぎない」と指摘し、日本政府がほぼ毎年死刑を執行していることや、市民に対し死刑に関する情報を十分に提供していないことを批判。「たとえ人を殺めた者であっても、その生命の大切さから、刑罰によってその生命が奪われることがあってはならない」と強調し、「あらゆる分野の市民が死刑廃止の意味と目的について理解を深め、すべての人間の生命権を重視する死刑のない民主主義社会の即時実現」をめざす、と主張している。

 今後の活動として、新聞に意見広告を出したり、全国各地で集会を開いたり、今年11月に来日予定のローマ法王にアプローチしたりすることなどが検討されているという。運営委員会で具体的な内容を決める。

 「死刑をなくそう市民会議」のホームページ http://ccacp.jp/

(ライター・小石勝朗)

(2019年09月10日公開)


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