刑事法研究者、日本学術会議会員任命拒否に対する声明を発表


日本学術会議全景(東京都港区六本木)

 菅義偉首相は、10月1日、日本学術会議が推薦した新会員候補6人の任命を拒否した。これに対して、日本学術会議は、10月2日、この任命拒否について、内閣に対して①推薦した会員候補者が任命されない理由の説明、②2020年8月31日付で推薦した会員候補者のうち、任命されていない者の速やかな任命の2点を要望した。その後、学会や言論界から、任命拒否は表現の自由や学問の自由を侵害するものとして抗議の声が多数あがっている。

 10月23日、文部科学省記者クラブで、「日本学術会議会員任命拒否に対する刑事法研究者の声明」の呼びかけ人である新倉修・青山学院大学名誉教授、後藤弘子・千葉大学教授、本庄武・一橋大学教授が記者会見を行い、声明を発表した。この声明には、呼びかけ人48名、賛同人171名、計219名の刑事法研究者が署名している。

 声明では、日本学術会議の意義とこれまでの経過を述べた後、任命拒否された6名のうちの1人である松宮孝明・立命館大学教授は、「長年にわたり日本刑法学会の理事を務めている刑事法研究者である。質量ともに圧倒的な研究業績を誇り、日本を代表する刑事法研究者のひとりである。……科学者コミュニティの代表としての適格性には、まったく疑いがない」として、今回の任命拒否は、刑事法研究者にとって驚愕の出来事であると指摘している。

 さらに、戦前の滝川事件での言論弾圧について触れ、「刑事法学は、性質上、国家権力と厳しく対立する場合もある学問領域である。我々は、刑事法研究に従事する者として、今回の事態を看過することは到底できない」として、菅首相は任命拒否の理由を説明するとともに、速やかに任命を行うべきであると結んでいる。

 しかし、10月28日、衆議院本会議ではじまった首相の所信表明演説に対する代表質問においても、菅首相は任命拒否の理由を説明せず、改めて任命することも否定している。このような無責任な対応に対しても、ますます抗議活動が高まるものと思われる。

(2020年10月29日公開)


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