大藪大麻裁判第7回公判/裁判所は押収された「植物片」は違法収集証拠でないと判断


前橋地方裁判所(2023年3月22日)

 3月22日午後1時30分より、前橋地方裁判所(橋本健裁判長)で大藪大麻裁判の第7回公判が開かれた。裁判長に向かって左側の席に検察官、右側の席に主任弁護人の丸井英弘弁護士、石塚伸一弁護士、そして被告人の大藪龍二郎さんが着席して、定刻通り始まった。

 これまでの裁判の経過を確認しておく。

 陶芸家の大藪さんは、2021年8月8日午前5時55分頃、陶芸イベントの帰り道で急に眠気を覚え、群馬県内の道路の路肩に駐車して、仮眠をとっていた。そこに、「不審車両」があると近隣者からの通報を受けた警察官らが駆けつけ職務質問を行った。そのとき、警察官は車両の中から「植物片」が入ったチャック付ビニール袋2つを見つけた。その場の予試験で「大麻」と断定して、大藪さんを大麻取締法の大麻所持罪の現行犯で逮捕し、そのビニール袋2つを押収した。

 弁護人は、裁判ではこの逮捕には必要性などがなく違法であり、押収した証拠は違法収集証拠であるとして争ってきた。

 第3回第4回の公判で、弁護人は検察官が請求した書証(「現行犯逮捕手続書」「捜査押収書」)を不同意にして、職務質問から現行犯逮捕にいたる一連の手続は違法であるとして、警察官への反対尋問でこれを立証してきた。 

 今回の公判では、裁判所がこの一連の手続が違法であるかどうかも判断することになっていた。違法の場合は、押収された「植物片」が証拠から排除されることになる。それは無罪判決に直結するもので、裁判前半の山場であった。

 橋本裁判長は開廷直後に、「検討した結果、違法収集証拠でないと判断した」といつもとは違って小さな声で決定を下した。主任弁護人の丸井弁護士は聞き取りづらかった様子でもう一度大きな声で繰り返すように求めた。丸井弁護士は内容を確認した後、すかさずその理由を問い質した。しかし、橋本裁判長は「後ほど判決の中で触れる」というだけで、その場では決定の理由を一切示さなかった。これによって、違法収集証拠排除による無罪の途は完全に閉ざされたことになる。今後、弁護側は無罪を獲得するためには、大麻所持は自己使用のためで罰する程の法益侵害(可罰的違法性)がないことや、大麻取締法そのものの違憲性を争うことになる。

 ついで、検察官は、現場で押収した「植物片」入の2つのビニール袋を大藪さんに示して、本人のものかどうかの確認を求めた。大藪さんは自分のものであると答え、それらは証拠として採用された。

 このため、石塚弁護士から、裁判官と検察官に対して、鑑定に疑問があれば証拠物の再鑑定の必要性が生じることがあるので、その保管を徹底するよう要請した。

 さらに、石塚弁護士は検察官に対して、群馬県警科捜研の鑑定人が鑑定した際に記録した「検査記録」の開示を求めた。この「検査記録」は、検察官が事前の証拠開示で存在していないとすでに回答していたものであるが、前回の公判で証人に立った同鑑定人がその存在を証言したものである。「検査記録」は鑑定経過などを記録したもので、鑑定書の信用性を判断する上で欠かせないものである。

 現在のところ、弁護側が請求した証拠は、大藪さんが自身の芸術活動と大麻との関わりを明らかにした「被告人作成の裁判官宛報告書」以外はすべて却下されたことになる。

 その却下された証拠には、『マリファナはなぜ非合法なのか?』『大麻使用は犯罪か?』などの文献が含まれている。

 こうして、公判は、傍聴人がなにが起こったのかあっけにとられているうちに、実質30分程度で終了した。

報告集会で、「これは裁判か」と憤る大藪龍二郎さん(左から2番目)と今後の裁判の方針を語る丸井英弘(左から3番目)、石塚伸一(右端)両弁護士(群馬会館にて、2023年3月22日)

 公判終了後、群馬会館で、記者会見と報告集会がもたれた。

 丸井弁護士は「大藪さんの報告書以外、書証などは全面的に却下された。裁判官はその却下した理由を言わない。憲法で保障された司法の機能が働いていないというほかない。こちらは当たり前の要求をしているのに裁判所は認めない。しかし、ここで諦めてはいかんので、なお一層の努力をしたい」と、裁判にがっかりしていた様子の大藪さんや支援者を励ますように語った。

 具体的には、「大麻取締法は、昭和38年の改正で厳罰化された。それによって逮捕がしやすくなった。しかし、改正について国会でほとんど審議されていないし、改正内容についての国民に対する情報提供もきちんとしていない。これは憲法31条の適正手続違反だ。今後は、裁判でこの問題を根本から問い質したい」と大麻取締法の違憲性を真向から争う方針を打ち出した。

 石塚弁護士は「今日、開示請求した鑑定の『検査記録』はきわめて重要なものである。前回の鑑定人の証言でわかったように2つの植物片の鑑定時間が大幅に違うなど疑問点がたくさんある。検察官が提出してきたら専門家にそれらを精査していただき、必要があれば新たな反証をしたい」と力を込めて語った。

 大藪さんは「とてもとても残念な裁判だった。これまで、裁判ではこちらが提出した証拠が全部採用されて、議論が進むものと期待していた。裁判官が証拠を見た上で採用しないというのは意味がわからないし、その理由も示されない。これは裁判と言えるのか。司法が機能していない証拠だ」と憤りをあらわにした上で、「被告人が納得する公正な裁判をして欲しい。国連へ人権問題として訴える必要性を強く感じた」と裁判の上だけでなく、国際的にも訴えていく意欲を示した。

 次回公判で、裁判所は、弁護側が申請した厚労省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長の佐藤大作、甲南大学名誉教授の園田寿、作家の長吉秀夫、医師の正高佑志各氏の証人の採用について判断する予定である。証拠調べもいよいよ大詰めを迎える。

 次回は、5月16日(火)午後1時30分からである。当日12時30分から50分まで傍聴券を配布して抽選がおこなわれる。

(2023年04月10日公開)


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