
イノセンス・プロジェクト・ジャパン(IPJ)は、7月5日(土)、東京で、クリス事件シンポジウム「無罪証拠を無視したDNA鑑定によるえん罪」を開催する。
DNA鑑定は、足利事件や東電女性社員殺人事件など無罪を争う事件で強力な「武器」になってきた。しかし、DNA鑑定の結果を無批判に信頼することは極めて危険である。鑑定試料の採取・保管方法、鑑定方法、鑑定結果に対する鑑定人の評価などに問題があると、誤鑑定が生じる危険性が高まるからである(詳しくは『Q&A見てわかるDNA型鑑定〔第2版〕』〔現代人文社、2019年〕参照)。
2018年7月深夜、千葉県市川市で、帰宅途中の女性が口淫を強制させる事件が起きた。事件から3年4か月後、クリストファー・ペインさん(母はアフリカ系アメリカ人、父はギリシャ人)が、DNA型が犯人と矛盾しないとして、逮捕・起訴された。これがクリス事件である。
事件では、女性は、その場で精液を吐き出し、帰宅してうがいをし、警察に通報した。そのため、採取されたDNA資料は、微量、かつ、(被害者の口腔内細胞との)混合であった。このような微量かつ混合資料のDNA鑑定は、困難で、そもそも精子のDNA型を特定することができないと、いわれている。
クリスさんは、裁判所による正確なDNA鑑定を求めた。しかし、職権で行われたDNA鑑定でも、DNA型は矛盾せず、その出現頻度は、約17兆人に1人(なんと地球2,099個分!)とされた。
クリスさんは、事件当時は、東京都・渋谷にいて、事件から5分後に、交際相手にメール送信していた。
ところが、一審(千葉地裁)は、「DNA鑑定によると、地球上に犯人と同じDNA型の人物は被告人しかいない。犯人であることとメール送信は矛盾しない」として、懲役8年を言い渡した。
しかし、控訴審(東京高裁)で、弁護団が、DNA鑑定の生データの開示を求めたところ、DNA鑑定のデータが改ざんされ、犯人のDNA型と矛盾しないように捏造されていた。さらに、アリバイの決定的な証拠であるスマホのメール送信による位置情報が無視されていることが浮上した。
主催者は、クリス事件は、無罪証拠を無視したDNA鑑定によるえん罪であるとして、シンポジウムでは、科学的証拠を正しく評価できない日本の刑事裁判に光を当てクリス事件の問題点を検討する。
◯2025年7月5日(土)14:00〜17:30(13:30開場)
◯会場:AP東京八重洲10階 Wルーム (JR東京駅より徒歩6分)
アクセスマップはこちら。
◯参加費:無料 要事前申込み(会場参加とオンライン参加とも)
◯参加申込み方法:こちらのフォームから申込む。
*主催者は、会場参加される場合も、設営等の準備のためなるべく事前の登録を希望している。
◯プログラム:
・開会の挨拶………笹倉香奈(IPJ 事務局長、甲南大学教授)
・事件の解説(クリス事件弁護団)………事件の概要と争点/佐藤博史(弁護士)、袴田事件のDNA鑑定/角替清美(弁護士)
・コメント………Simon Ford (Lexigen Science and Law Consultants,San Francisco)、徳永光(獨協大学教授)
・応援メッセージ・支援の呼びかけ………竹前智貴(クリス事件弁護団)、クリス事件支援者 、IPJ 学生ボランティア
・閉会の挨拶………石塚章夫(IPJ理事長、弁護士)
◯主催:一般財団法人イノセンス・プロジェクト・ジャパン(IPJ)、IPJ学生ボランティア
(2025年06月27日公開)