
「再審法」改正をめぐっては、「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(議員連盟)に属する野党議員が6月に議連案(第217回国会衆法第61号)を提出したが、12月17日に会期末が迫る今臨時国会でもいまだ審議入りが見通せない。
一方で、法制審議会における再審法改正についての議論は、証拠開示の範囲を「再審請求理由と関連する証拠」に限定することや、検察官抗告を禁止しないという方向に進み、現状より改悪にもなりかねないと懸念の声が相次ぐ。
そのような状況のなか、12月11日に開かれた衆議院法務委員会で、再審法改正の動きをめぐって、議員から質疑がなされた。
自民党の稲田朋美衆議院議員は、今年7月に再審無罪判決が出された福井女子中学生殺害事件(福井事件)を特に例に挙げ、現行の再審法の不備を主張した。
福井事件の再審請求審では、長年にわたって検察が証拠を隠し続け、ようやく開示された証拠の中に無罪を証明する重要な証拠が見つかった。稲田氏は「福井事件は再審法改正の立法事実そのもの」と訴え、議連案に沿った再審法改正を求めた。
平口洋法務大臣は、「引き続き法制審議会において検討し、議論の結果を踏まえて対応したい」と答弁した。稲田議員は「今のではダメなんですよ!」と声を荒らげ、階猛法務委員会委員長に対して、議連案の早期審議入りを求めた。
再審について研究している刑事法研究者に対して、先月時事通信社が行なったアンケート調査では、法制審議会の人選は「不適切」または「どちらかと言えば不適切」と回答した研究者が19名中17名を占めた(「法制審人選、「不適切」が多数 「適性に疑いなし」意見も―再審アンケート」 )。
日本共産党の本村伸子衆議院議員は、そのようなアンケートの結果を踏まえ、「大臣が法制審議会の議論を待っていることのほうが不適切」と痛烈に批判した。
本村議員は、冤罪事件を例に挙げながら「現行の再審法に不備があると認識してほしい」と何度も詰め寄るも、平口法務大臣は「再審制度にはさまざまな議論があることは承知している」と煮え切らない答弁を繰り返し、議員からは批判の声が上がった。
法制審議会の議論に関しては、刑事裁判の専門家からも疑義を唱える動きが見られる。今月に入って、135人の刑事法研究者による声明、4人の刑事法研究者による意見書、63人の元裁判官による共同声明が相次いで公表された。いずれも法制審議会での後ろ向きの議論を批判し、議員立法による再審法改正を支持するものである。
本村議員は、このような状況を踏まえ、「歴史的な批判が巻き起こっていることをご認識いただきたい」と平口法務大臣に訴えかけた。
議員連盟は、12月8日に衆議院第二議員会館で総会を開いた。総会には袴田巖さんの姉・ひで子さんや、法制審議会委員の鴨志田祐美弁護士、村山浩昭元裁判官・弁護士も出席した。
袴田ひで子さんは、袴田事件において「大きく流れが変わったのは証拠開示」だと語り、議員立法での再審法改正の実現に期待を述べた。これに対して議員連盟は、議連案の今国会での審議入りに向けて意気込んだ。
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(2025年12月12日公開)