『司法はこれでいいのか。──裁判官任官拒否・修習生罷免から50年』


 ブルーといえば‘紺碧’の空とか‘紺青’の海のように清明感や爽快感を想起させる語であるが、本書のテーマは「ブルーパージ」すなわち青年法律家協会に所属した者の裁判官職からの排除施策という人権侵害、それも最高裁判所による人権侵害である。

 本書は、司法が骨抜きされることに危機感をもった阪口徳雄・梓澤和幸・宇都宮健児各弁護士らの23期・弁護士ネットワークの著である。

 4部構成の前半第1〜3章では、強権的かつ陰湿なブルーパージの被害者側からの、最高裁判所という巨人に向かっての必死の闘いの実態や心情について、またその後の各人の法曹人としての生業や信念について語られている。次いで第4章では、パージの実行(敢えて加害とは言わない)側のボスである石田和外最高裁判所長官(当時)の経歴と素顔や石田流「司法の独立」論を錦の御旗にして司法官僚化していく‘管理者’裁判官を根幹とする「石田王国」の構築と継承について、西川伸一明治大学教授の分析が著されている。

 東西冷戦の深まりと学生の政治運動の先鋭化や公務員労組の労働基本権拡充要求の活発化など様々な当時の国内外の諸事情に上手く乗って、当時の自民党政権や保守系の懸念に応えるように、多様な会員が所属していた青法協会員をあたかも共産主義者のように烙印付けして軍国主義者や無政府主義者と並べて法曹不適格を宣明して行なわれたこうしたパージは、決して許されるものではない。本書は、こうした偏頗な「司法の独立」論のもとで侵害された「裁判官の独立」を再生し、真に国民、市民のためになる司法を取り戻す活動の必要性を痛感させるものである。

(ま)

(2021年04月23日公開) 


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